2020-08-15

この問題の解き方が分かりません

ついに浮気相手と別れた。

というより、別れてしまった。俺は別れたくなかったのに。

本当に心地いい関係だった。

それなのに、なんでなのかな、と思う。


きっかけは、「もう会えなくなる」と俺が言ったことだろう。

そのとき彼女は、「え…」と本当に驚いた顔をして、理由をしきりに聞きたがった。

俺も最初ははぐらかしていたけど、酒も入っていたし、彼女のことが本当に好きになっていたから、

嘘をつきたくなくて、でもやはり言いたくはなくて、「どう思う?」などとごまかしていた。


やっぱり女の子というのはすごくて、長い時間を一緒に過ごすと、こちらの思惑など見透かされているようだった。

海外に転勤?」とか「東京に行くんでしょ」と言っていた彼女に、「そうかもね」と笑いながらごまかしていたら、

「あー彼女できたんだ」と言われてしまった。そうなんだけど、彼女っていうか婚約者なんだよね。

「まあ、そんなとこかな」と言ったら、「もう結婚じゃん」と言った。おお、そんなことまでわかるのか。悔しいなあ。


そんなこんなで、その日最後に寄ったバーで、割りと洗いざらい話してしまった。

ただ、最後まで結婚はしないという体でしのいだ、というか言えなかった。それがせめてもの誠実さの表現だと思った。

彼女の前では誠実でいたかった。むしろ彼女だけを愛していたかった。痛い奴だった。

でも、彼女はもうわかってたようだった。今思えば、俺を見る目がとてもさみしい目をしていたような気がする。


その夜、ホテルに戻ってから、何事もなかったかのようにセックスをした。

風呂に入りながら、俺は、相変わらず可愛いなと思っていた。

彼女は俺の方を見ずに、「結局どれが本当なの」と尋ねた。

「○○は、どれがいい」

海外に行くんだったら、私を泊めてよ」

「そうだな」

「で、本当は?」

「……本当は、東京に行くんだ」

「ふーん」「彼女、いつから付き合ってたの」


それから、俺は誠実な態度をとることはできなくなった。

誠実な人間が、真実を知りたがっている者に対して嘘をつくというのは、矛盾からだ。

言ってしまった、と思いながら、もはやどの嘘なら彼女を傷つけないのかわからなかった。

結局俺は、「彼女浮気相手であり、本命東京にいる。そして、彼女出会ったのと同時期くらいか

本命とも付き合いだした」ということを事実だと思わせたような気がする。

本当と嘘が入り混じって、最悪のクズ男が出来上がっていた。今思えば、だが。


そして次の日、笑いながら家に帰り、いちゃつきながらご飯を食べ、何回もセックスをした。

この日までは、彼女もあまり気にしていなかったような気がする。

「もうすぐ会えなくなるのかー」

「会えないならどうする」

会えないのはやだな、と答える彼女に俺は安心した。

ああ、会いたくなるような関係をまだ維持できているんだと思って、

……思って、そこで終わった。彼女気持ちなど考えなかった。


彼女とは、その二日後に会ったのが、最後になった。

少しおしゃれな雰囲気の近所の店でご飯を食べ、家でセックスをした。

彼女は、俺に、家に置いてあった下着を持って帰るように言った。

なんで、と言っても、いいから、というだけで、有無を言わさず持たされた。

玄関先で、少しだけ機嫌の悪そうな顔をしていたけど、いつも通りキスをして別れた。

でも、あの顔が引っかかっていたから、「大丈夫だった?」とラインをした。


返事は帰ってこなかった。それから3日後、ラインブロックされたようだった。

こうして、俺たちは会わなくなった。つまり、俺は彼女に会えなくなった。

彼女は、俺がクズ男だったということに気づき、今頃はマッチングアプリで次の男を探していることだろう。


ああ、なんと素晴らしい。

なんのために、あの時間を一緒に過ごしたのだろう。

どうして、俺は本当のことを言う気になり、そして、最後まで本当のことは言わなかったのだろう。

嘘をつきとおすか、本当のことを言うか、どちらかにしなければ苦しいだけなんだと、

それを学ぶために彼女出会ったんだろうか。

そんなことしか考えられない適当さが、身を亡ぼすのだろうか。


本当は、

本当は?

本当は、一つ決めたことがあるんだ。

今度からは嘘をつき続けようって。本当のことを言っても嫌われるだけだからね。今回みたいに。

そりゃ真実は頭を使わないから言いやすいよ。けど、それが相手にとっては不快なこともある。

お互い、ずっと嘘の中で気持ち良くなればいいと思わないか


でも、その子は、本当のことを言ったのにね。

の子が嘘をつくような子だったら好きにならなかったのにね。

どうして誠実でありたいと思ったの?

の子の幼さに、愚直さに、応えたいと思ったんじゃないの。


そう、応えたいと思った。

嘘によってこの子コントロールするのは違うと思った。

でも、結局は「応えてあげる」という傲慢さでもって、その子支配できると考えていたに過ぎなかったのかもしれない。

「嘘をつくのをやめて、真実を話してあげた」のだからあなたは私のことを嫌いにならないよね?むしろ好きになってくれるんじゃないか、と

そう

考えていた、

あのときの僕の笑顔彼女の暗い目。どうして、どうして気付かなかったの。

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