2019-03-31

30年以上通ってきた床屋が閉店する

まれからずっと地元に住んでいる。物心いたこから通っていた床屋が閉店することになった。ご主人と奥さんでやっている個人経営の店だ。二人ともすっかり歳を取ってしまって、いつ引退してもおかしくはなかった。もしかすると、平成の終わりついでに閉店というのもあるのかもしれない。いつか来ることではあるのに、実際そうなるとショックだった。

親に連れていってもらったので、スタートはいつなのか曖昧だ。糞ガキだったから、騒いでうるさかったんだと思う。
一度お金が足りなくて、走って家まで500円玉を取りに帰って、子ども心にとても申し訳なくなったのを強烈に覚えている。
ヒゲが生え始めの思春期のころ、顔そりをしてカミソリ負けで肌がヒリヒリしたのも少し覚えている。
高校大学就職挫折して退職転職と、人生の転機をまたがりつつも通っていた。たぶん身の上話はそれほどせず、置いてあった漫画本を読んでいた気がする。今思うと、もっと話をしておけばよかった。それでも、少しだけ話していた仕事家族のことはよく覚えていてくれた。疎遠になった同級生の近況も、床屋の主人を介して知ったこともあった。

床屋は、頑なに変えなかった。不満は無かったから変える必要もなかったし、何より居心地もよかったんだと思う。同級生美容室に行けばと馬鹿にされたこともあったが、店を変えることは引っ越しなどよほどのことが無い限りしないつもりでいた。結局、進学や就職しても地元を離れることがなく、30年以上通い続けた。

閉店を知っても、床屋という性質上、飯屋のように頻繁に訪れることができない。自分の髪も薄くなり、来店間隔は最近長くなりがちだったが、閉店を知ってからは1ヶ月刻みで行った。変わらぬ店の風景がもう見られないと思うと、急にいとおしくなる。通い始めは子どもだった自分中年にさしかかり、髪に白髪も少し交じりだした。額がこれぐらい上がってしまったと指摘してくれた。何十年も頭を見てくれたご主人ならではだ。

週末の休みを利用して、最後の散髪に行った。店にはたくさんの常連で混み合っており、花やお菓子やらのプレゼントで溢れていた。自分も30年分の思い入れがあり、精一杯考えて差し入れをした。混んでいたので、最後挨拶もそこそこだった。本当はもっと感謝しているのだが、それを表現しきれないのがもどかしかった。

今は次の床屋開拓するのが考えられない気持ちだ。こんな寂しい思いをするんだったら、次からは安くて早くて人の入れ替わりも激しそうな格安床屋チェーン店にでもしようかなと思っている。

  • お前が後を継げよ!!定年も近いだろ!

  • ueno_neco 私も中3で知り合い(当時はアシスタント)高校から切ってもらってる美容師さんが、おととい誕生日だよとfacebookから通知来たのでお祝い書こうとしたら、美容室が元勤務先に...

  • 中年になってからだとそこまで思い入れは強くならないと思う。 子供の頃から通っていたというのがミソでこれが文字通り一生に一度の精神体験だろうな。

    • 俺は社会人になってから通い始めた床屋にもう20年以上通ってるなぁ。あまりうるさいこと言わずに、これくらいでって頼めば適当に切ってくれるのでありがたい。

  • 30年通ったら課金額はいくらぐらいになるんだろう。3000円で年9回行くとして30年だと81万円なので中古の軽自動車が1台買えるぐらいですかね。

  • 床屋より先に髪がなくなった俺の話する?

記事への反応(ブックマークコメント)

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