ジャンプ+での最初の読み切り→本誌での二回目の読み切り→本誌での連載1話→2話 その全ての段階で着々と劣化が進行している。
1話が酷すぎたせいで2話がマシに見えるのでもしかしたら少しだけ回復している可能性はあるが……。
ともあれ一番最初の読み切りと連載1話の落差は本当に目も当てられない。
その後の姿と比べれば圧倒的に真人間だった。
一見役に立たなそうだけど使い道が全くないわけではない道具を必死に売り込む彼の姿は、心を持った奇妙なゴーレムの製作者として納得がいく。
少なくとも、街中のゴーレムをぶっ壊して回る男よりは圧倒的に無害だ。
彼は街の住民に気味悪がられていたが、町の住民に害をなそうとはしなかった。
主人公ゴーレムの行動に対するアドバイスもただ甘やかすだけの連載版と比べて極めて適切だ。
何より自分の教育不足を棚に上げて他人に声を荒げる事もしない。
特別な技術と少し拗れた人生を抱えたちゃんと読者が共感できるキャラクターだった。
主人公ゴーレムの方も連載1話では町の住民に気味悪がられこそすれ迷惑をかけているわけではない。
自分を省みず他人の役に立とうとするゴーレムじみた行動原理と能面のような無表情を持ちながらも、同時に人間のような外観とゴーレムとは思えないほどに自由な思考を持つという姿のぶつかりあいが強烈な不気味の谷を生み出し、それゆえに町の住民から煙たがられていた可哀想な人造人間の姿がそこにある。
自分の独善を押し付けて結果として他人に迷惑をかけてもお構いなしの自己中であり、そこには他人の役に立ちたいという気持ちよりも自己満足に浸りたいという欲望が有るだけだ。
そして後期量産型ヒルルクもどきはそれを後押しし続け主人公ゴーレムの中で自己満足という名の怪物をどこまでも大きく育てていく。
そうしてそだった身勝手すぎる生き様を人間らしいと賞賛して、人間として社会で生きていくためにちゃんとしつけられた他の家の子供と同じように愛されるべきだとわめき散らすのだ。
それは違う。
読み切り版ヒルルクが「お前には心があるんだから」とゴーレムに諭すあの表情は親の顔である。
なぜ読み切りヒルルクはただ優しく微笑みかけるのではなく、どこか厳しい顔をしているのか。
なぜ読み切り版主人公は他人に迷惑をかけないように意識できるのか。
それは読み切り版のヒルルクが「人間には心があり、時に傷つく」と知っているからだ。
人には心がある。
だから嫌なことがあったら嫌な気分になる。
そしてそれを主人公にも分かって欲しいから、「お前にも心があるから傷つくはずだ」と語る姿が、ただ励ますだけの生暖かい甘やかしでは終わらないのだ。
人には心がある。
お前にも心がある。
だから悲しい時には泣け、嬉しい時には笑え、それが出来るなら、お前はきっと受け入れてもらえる。
そのメッセージには愛があった。
彼がその悲しみを表に出し、そこに誰かへの愛があったからだ。
本誌版にはそれがない。
ただ強いだけで身勝手なゴーレムと、その身勝手なゴーレムをみてニヤニヤする親失格のマッドサイエンティストがいるだけだ。
参考資料
+読み切り
https://shonenjumpplus.com/episode/10833497643049550104
本誌読み切り
https://shonenjumpplus.com/episode/13932016480029139684
連載1話