2017-10-21

[] #39-6「タオナケの正義

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俺たちは魔法少女にこれまでの経緯を語った。

「なるほどね。被害に遭った人の思考が極端になることは珍しくない。恐怖で外出するのすら困難になる人もいるし、その点タオナケちゃんはまだ深刻じゃないかもね」

「俺たちからすれば、そっちのほうがよかったよ。今のタオナケは破滅願望者と見分けがつかない」

心配なのね。なら、タオナケちゃんをもう少し思いやって言葉をかけてあげなさい」

「俺たちはそのつもりで言ったんだけど……」

まさか、『被害に遭いたくなければ、もっと気をつけろ』みたいなことは言ってない?」

「え、何で分かった。心を読む魔法も使えるのか?」

魔法はそんなに万能じゃないよ。今のは単なる推測。それにしても……君たちのその表現はマズかったかもね……」

タオナケが怒った発端からして多分そういうことなのだろうけど、俺たちにはその理由が分からないでいた。

「でも俺たちの言うこと自体が間違っているとは思わない。自衛ってのは必要ものだ」

「『被害に遭った人間の善し悪し』と、『被害に遭わないようどうするべきか』という話は同列で語られやすいけれど、厳密には別問題なの」

「それは分かってるよ。だから被害に遭わないよう、その可能性を減らすアドバイスをしたんだ。別にタオナケを責めるために言ったわけじゃない」

「その前提を、言われた本人が踏まえていなければ正しく伝わらない。多分タオナケちゃんは、あなたたちのアドバイス自分を責めている言葉だと解釈したの。ましてや被害に遭って間もないし、冷静に判断することも難しいでしょう」

魔法少女に言われて、俺たちはやっと理解した。

タオナケは気丈に振舞っていたが、本当はとてもショックだったんだ。

俺たちの何気ないアドバイスを誤解してしまうほどに。

それを分かってやれなかったことに、仲間として不甲斐ない気持ちになった。

「まずはタオナケちゃんに寄り添ってあげなさい。そうすれば、あなたたちの気持ちちゃんと伝わるから

「そうだな。よし、タオナケに連絡だ」

だがケータイは着信拒否されているらしく繋がらない。

仕方なく家にかける。

「あ、どうも、タオナケ?」

「私、親だけど」

出てきたのは親の方だった。

「あの、タオナケは?」

「外出したわよ。マスダさんのお宅に行くって」

入れ違いだったか

……いや、まさか

「みんな、緊急事態だ! 貧困街に行こう!」



タオナケ!」

あんたたち……別に頼んでもないのに」

貧困街のエリアにたどり着くと、意外にもタオナケはすぐに見つかった。

騒ぎを辿っていくと、そこにいたのだ。

またも自治体の抗争に巻き込まれたらしいが、今度は事情が少し違う。

タオナケが堂々と振舞っていたものから当事者だと勘違いされたのだ。

「それ以上、近づくなガキ共。ワシの正しさは半径10メートルのもと確約される」

暴徒はタオナケを拘束し、打撲武器をチラつかせる。

そのせいで俺たちは距離を詰められずにいた。

だがタオナケには無機物破壊できる超能力がある。

それを使えばチャンスを作れるのだが……そんなこと言われなくともやっているはず。

なぜやらないんだ。

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