2017-10-20

[] #39-5「タオナケの正義

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「なあタオナケ……まさか明日貧困街を通ったりしないよな?」

あんた達に言う義理はないわ」

「やめときなよ。危ないよ」

あんた達が決めることじゃないわ」

タオナケの怒りは放課後になっても納まらず、俺たちと意図的距離を空けて接する。

事情を把握していないシロクロは首をかしげるばかりだ。

「なあ、なんかタオナケのやつ、ちょっとこじらせてないか? 風邪か?」

「違うよ、シロクロ」

まあ、完全な予防が困難という意味では似たようなものかもしれない。

タオナケのやつ自意識が強く働いて、かえって自衛必要性を見失ってる」

俺たちはほとほと困り果てていた。

俺たちが間違っているのならタオナケに謝ってそれで終わりでいいんだけど、別にそういうわけでもない。

それでは何も解決しない。

そもそも俺たちが優先すべきは、タオナケとの関係修復じゃないからだ。

「まあ……しばらくしたら戻るさ」

「しばらくじゃ遅いよ。このままじゃタオナケが意地になって、またあの場所を通るかもしれない」

そう、今回は他に解決しないといけない問題があるんだ。

次にまた何かあったとき、今回みたいに俺たちがフォローできるとは限らない。

けれどもタオナケのあの様子を見ていると、俺たちではとてもじゃないが説得できる気がしなかった。

まり猶予はない、明日までに何とかしないと。


事情を知っている兄貴にまず相談した。

兄貴が言うには、まずタオナケを説得することは難しいだろうということだ。

人間意志なんてそう簡単には変わらないし、頭ごなしに押さえつけても反発が強まるだけ。

から貧困街に行っても大丈夫なよう、警護をつけるべきだと考えた。

市民団体中途半端に介入すれば、必要以上に場を荒らす。

だが俺たちでは力不足だし、タオナケ自身それを望まないだろう。

なので個の力が強い第三者にそれとなく警護してもらうのが、ひとまずの応急処置だと兄貴分析した。

そこまで分析してもらえれば、俺たちが思いつく選択肢はだいぶ絞られる。


俺たちは魔法少女に頼み込んだ。

とある一件で正体を知って以来、俺たちはたまに魔法少女に絡むようになった。

まり知り合いである。

「うーん……そーいう個人的問題魔法少女管轄内だっけ?」

魔法少女肩に乗った謎の小動物に話しかける。

すると小動物は抑揚のない喋り方で、淡々説明を始める。

そもそもの話をしますと、我が社の魔法少女試験の一環として都市に配属された操作アンドロイドです。有志を募って参加していただいております

「駄目ってこと?」

魔法少女になってやることは、主に自分の住む町の自警活動や、イベントなどの参加。後は定期的に報告書の提出や、魔法少女たちの集会に参加していただくことです。後は、良識範囲内で魔法少女になることは自由となっております

「つまりコンプライアンス上は問題ない範疇、ってこと?」

「そうなります

無駄説明が多すぎる。

「それじゃあ、タオナケをさりげなく警護してあげてよ。ついででもいいからさ」

「うーん、駄目ってわけじゃないけど、そういうのって際限がないしなあ」

「そんなこといって、ほら、あるだろ……マジックワードが」

「そんなものないよ」

パワーワードでもいいよ」

パワーワードもないし、そんなのでどうにもならないでしょ。そもそも、どうしてタオナケちゃんはそんなことをするの?」

そういえば、まだ事情説明していなかった。

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