2017-10-18

[] #39-3「タオナケの正義

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学校にたどり着いた頃には俺たちは息も絶え絶え。

特にタオナケを抱えて走っていた兄貴疲労は相当なものだった。

「ここまで来れば十分だろ」

ありがとう兄貴学校あるのにゴメンね」

兄貴タオナケを降ろすと、呼吸を調えて酸素供給して脳を稼動させる。

学校……そうだよ、学校あるんだよ。なんで朝からこんな……金を貰おうがボランティアは二度とやらん……」

うわ言を呟きながら、兄貴はよろよろとした足取りで去っていた。


タオナケはというと、ここに来るまで何も言葉を発していない。

トラブルに巻き込まれたのが、よほどショックだったのだろうか。

やれやれ。これにこりたら、あん場所を一人で歩こうとはしないことだな」

俺の何気なく放ったその言葉が、タオナケの琴線に触れた。

「私、疑問なんだけど、何その理屈

タオナケが今日俺たちに初めて投げかけた言葉は朝の挨拶でも、助けてもらったお礼でもなく、怒りの言葉だった。

から気難しいところがあったが、ここまで過剰に反応するのは初めてだったので俺たちは戸惑った。

危機管理をしっかりしろってことだよ」

「私、被害者だけど、私が悪いっていうの!?

「そんなこと言ってないだろ」

「言ってないけど、言ってるようなものでしょ」

「違うってば、タオナケ。巻き込まれたのは気の毒だけど、それはそれとして自衛に努めようって言っているんだよ」

「私は悪くないけど、そんな奴らを気にして自衛しないといけないの? 理不尽わ!

俺たちはタオナケが何で怒っているのか分からなかった。

いや、全く分からないというわけじゃない。

けど主張を理解するための、タオナケの“心の根っこ”が分からなかった。

ただワガママを言っているようにしか見えなかったんだ。

「不平不満を言っても事態好転しないよ。個人差はあるけど皆やってることだ。ほら、僕も防犯ブザー持ってる。聴覚が敏感だから防犯ブザー使ったら自滅するけど、そのために唐辛子スプレーも持ってるよ」

「俺は胡椒スプレー。ドッペルも胡椒スプレー持ってるよな?」

「……柚子胡椒スプレー

柚子胡椒胡椒は入ってないよ」

「つまんねえ揚げ足とるなよ、ミミセン」

「もういい、絶交よ!」

金切り声でそう叫ぶと、タオナケは先に教室に行ってしまった。

タオナケの絶交宣言は、今シーズン初だ。

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