動画:故人がペッパーでよみがえり、テクノロジーで弔う「四十九日」 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
この記事が話題になってて、故人の顔と音声をPepperで49日間だけ再生するという奇妙なプロジェクトがあるのを知ったんだけど、記事を読んでもこの発案者の市原さんという人の考えてることがよく分からない。
記者はこう書いている。
故人が四十九日の間、そばに居てくれたら。懐かしい口ぶりや仕草をもう一度目にすることができたら──。大切な人を失った喪失感を、テクノロジーで癒やす「新しい弔い方」に目を向けたのはアーティストの市原えつこ(Etsuko Ichihara)さん(29)。
遺族の悲しみを癒すと記者は書いているが、市原さんの考えはもう少し深いところにあるらしい。
「誰かが亡くなった悲しみや、自分が死ぬかもしれない恐怖を、科学では根本的に解決できないところがある。それを担ってきたのが宗教。宗教がかつて担っていた領域を、テクノロジーを使って再輸入できないかと思った」
意図するところがわからないが祖母の死をきっかけに思いついたそうだから、肉親を亡くすとはどういうことか、具体的な何かの思いがこのプロジェクトを動かしてるんだと思う。
でもさ。
俺の父親は認知症で60代半ばでボケ出して徘徊をするようになり、二人きりで住んでいた老齢の母を散々手こずらせ、もちろんヘルパーさんは来てくれるんだが24時間つきっきりな訳はなく、70をいくつか過ぎて足腰が弱ってからはやっとおとなしくなったけどその頃にはもうまともな会話ができなくなって、80のだいぶ前に病院のベッドで干物みたいになって死んだんだけど、あの10数年間の父、誤解を恐れずにいうと徐々に父でなくなっていった父をPepperで再現する意味はないし絶対してほしくないな。だって死ぬ間際の父はロボット以下だったのだから。
父の通夜では俺が添い寝した。焼き場で骨を拾った時は泣いた。母は通夜も葬儀も泣き通しだった。だから悲しくないなんてことはない。
でもある種の解放感を感じなかったかと言えば、それはウソになる。
肉親を失うって、ただ悲しいだけじゃない、色々な感情のごちゃ混ぜなんだと思う。通夜から葬儀の間は、感情に向き合うのを忘れさせるために、わざとバタバタと忙しくさせるのだとも聞く。
49日、あるいは納骨までの一定の期間というのは、介護で苦労した母の思いや遠くで働いているためにモヤモヤした思いでいるばかりでロクな孝行ができなかった俺の悔恨を整理するために用意されていたように思う。
父には大した遺産なんてなかったから相続がどうのというのはなかったけれど、相続で揉めると憎しみさえ生まれるかもしれない。
そんなこともあってか、亡くなったのお面をかぶり喋り方を真似るPepperというのが、ビジュアル的な気色悪さを除いても、何でそういうものを作るのか、やっぱりピンと来ない。晩年の父はボケてたから。ボケた肉親のロボットに出会いたいと思うだろうか?
もちろんこれはうちの場合だけで、中にはPepperになった肉親に会いたいと思う人もいるだろう。だからそれぞれの家庭の事情に結局は帰着するのだという身もふたもない話になるのだが、少なくとも俺には故人のモノマネをするPepperというものに対して、拒否反応がまず第一に来てしまう。