2017-07-25

[] #31-1「その名も」

俺の住む町にはシロクロと呼ばれる人物がいる。

その名の通り白黒のツートンカラーを好み、あいつの着ている服はいだってその二色のみで構成されている。

その上、言動は不可解。

控えめに言って変人というやつだ。

だが、そんなシロクロに対して、この町は暖かく包み込む。

はいえ、当初からこのような扱いだったわけではない。


およそ2年前、あいつはこの町に出没し始めた。

どこの誰かは知らないが、誰もがみんな知っていた。

割合としては悪目立ちの成分が多めだ。

とは言っても、ジョギングしている人がいれば全力疾走で追い抜いて唐突勝利宣言をしたりとか、せいぜいその程度のことだ。

イエスエヌオーワン!」

意味が分からないと思われるかもしれないが、そもそも意味自体あるのかどうかすら本人に聞いても要領を得ないのだから他人理解できないのも当然だ。

俺が把握している限りでは、シロクロのせいで誰かが何らかの実害を被った話は聞かない。

だが、奴の不可解な言動は周りには実害同然だったのかもしれない。

世間だとか他人だとか言ったものは、そういった人間に対して思いのほか冷たい。


シロクロの友人である弟たちは、世間の風当たりの強さをどうにか出来ないか考えていた。

過激派がシロクロをこの町から追い出そうと画策しているという話を耳にしたからだ。

それだけならまだしも、戦闘集団である自治体まで動き出すという噂まで出てきている。

今のところは大人しい自治体だが、もしも本格的に動き出したとなったら有無もいわさず排除されるだろう。

「俺、なんだか悲しいよ。確かにシロクロはちょっと変な奴だけど、こんな扱いをされるような悪人じゃないのに」

しょうがないよ。僕たちはシロクロとそれなりに長いか理解を示せるけど、傍から見れば害虫人間の形をしているようなものから

ちょっと、その言い方は最低だわ。アレよ、アレ」

非人道的……?」

「そうよ、非人道的。仮にシロクロが概念公害からって、こんな扱いは不当だわ」

「今のままだとシロクロが可哀想なのは同感だ。なんていうんだっけ、アレだよ、アレ」

差別的……?」

「そうそう、差別的とかそこらへんに該当する可能性がなきにしもあらず」

「私もそう思うけど、シロクロを邪険に扱う人々にそんな言葉はもはや響かない所まで来ているのよ」

弟たちは揃って頭を抱えて、うんうんと唸る。

人道的な言葉で周りを諭すことが大して役に立たないことを弟たちは知っていた。

そんなことで解決するなら、弟たちがこうして心を痛めるような事態にまではなっていないかである

シロクロに対して周りが今よりも寛容になれる、それが自然と受け入れられる方法でなければいけなかった。

兄貴、何らかの案はない?」

話の輪に入ってもいないのに、いきなり話を振られて俺はギクリとする。

「んー……要はシロクロを常人目線評価してしまうから世間は変な目で見てしまうわけだろ。だったら、その目線を変えてやるよう促すことが必要なんじゃないか?」

このとき俺はテキトーに話を合わせただけのつもりだった。

「なるほど~、さすが兄貴。俺より早く生まれているのは伊達じゃないね

だが妙に得心した弟たちの様子を見て、俺は少し不安になった。

(#31-2へ続く)
記事への反応 -
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