2016-11-26

人工知能感情

FPS元祖DOOM」の2016年リブート版は、22世紀火星エネルギー精製施設UAC舞台なのだが、UACのすべての制御機器コントロールしているのは2.3テラワット/時の電力と絶対零度冷却システム駆動する巨大人工知能のVEGAだ。

VEGAは擬似人格プログラムされていて、UAC責任者サミュエルハイデン博士とごく普通の会話をすることができる。

ゲームの進行ではVEGAプレイヤーの案内役として、「セキュリティステーションに行ってキーカードを入手してください」といった指示を出す役割を与えられているのだが、ゲームの大詰め、UAC上にポータルをこじ開けられた地獄世界へとプレイヤー転送するため、自身のコアをプレイヤーに爆破させ、そこから放出するエネルギーを利用することをハイデン博士に「許可」される。


プレイヤー地獄デーモンの大群を突破してVEGAコアの破壊プロセスを開始すると、ハイデンとVEGA最後にこのような会話を交わす。

ありがとうVEGA

「後悔はたくさんありますハイデン博士


このゲーム世界では、近い将来のうちに人類人工知能人格シミュレートさせ、後悔や感謝といった感情表現を含めたより豊かなコミュニケーション人間とできるようになっているだろうという設定らしい。自身破壊をなんのためらいもなく容認しつつ(人間には逆らわない)、一方で後悔はあると落ち着いて語るVEGAは、AI理想の形を示していると言えるだろう。


本来感情を持つからには生存への意志欲望が背後にあるはずだが、VEGAにはそれがない。欲望を持たず、コミュニケーションスムーズにするため感情表現らしきものを織り込むことだけをプログラムされた、人間にとって実に都合のいい人格シミュレータとしてVEGA存在するらしい。とすると、人格とは(あるいは人間らしさとは)何か、に対する工学的な答えはコミュニケーションによって築かれる信頼関係の追求にあるようだ。ハイデンが「ありがとうVEGA」と言わずにいられなかったように。

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