リアルなCG作品だった。違和感がまったくなかった。あまりにもリアルなCG映画を観た後現実に戻ると、無意識にCGと現実の違いを目が探すのだろうか。現実世界で眼に映るものが、映画を観る前よりも新鮮に映る。不思議な気分だ。映画の中の世界も、現実と同じ、見慣れた渋谷、地下鉄のホームだったからかもしれない。CGに没頭すると現実世界がより現実に感じられる。いかに普段、自分が無意識に現実を過ごしているかということを思わされた。それにしても今日の感動は忘れたくないと思った。最初に泣きそうになったのは加藤が弟の誕生日ケーキを買って帰るところ。駅のホームで弟に電話をかける。弟と電話してる時に、誕生日を忘れたふりをして、弟に電話をガチャ切りされる。その後でサプライズの誕生日ケーキの紙袋を見つめる加藤の優しい目。開始五分で涙腺が崩壊しそうになる。次は加藤が自分の家族のことを話す時。加藤が語る。父親は消防士だった。両親は中学のときに事故で死んだ。中学生の弟がいて、学校に通いながらアルバイトで稼いで養っている。少しもそれを苦に思って無さそうに話す加藤。何と健気な。その後、加藤が正義感を発揮して、初めての戦いなのに、勇気を出してラスボスに挑むところも良かった。話し方はぶっきらぼうなのに、それが逆に誠実な感じがする。自分の考えで、自分の意志で主体的に行動しているからか、恐怖を乗り越えて人を助ける姿に嫌味は一切感じられなかった。人の目を気にせず、自分の意志に従って直向きに努力する加藤。そんな加藤に最初は臆病で自分が生き残ることだけを考えて行動する、と言っていたあんずが次第に感化される。最後は加藤を守るために、七回クリアの化け物プレーヤーを倒したぬらりひょんに単独で向かっていく。人は変わるもんだ。その直後、敵の攻撃で胴体から真っ二つにされるが、空中で上半身が逆さまになったときに後ろにいた加藤をしっかりと見つめるあんずの姿はとても印象的だ。ドシャリと地面に落ちるあんず。それを見た加藤は雄叫びを上げて泣きながら、膝から下を切断された両足を引きずり、離れたところに落ちている武器に向かう。何とかギリギリでその武器を取り、ラスボスに引き金を絞る。泣き叫びながら何度も引き金を絞り、ぬらりひょんに攻撃を浴びせ続ける。もうこれで倒せなかったら、終わりだろう。そんな思いが脳裏に浮かぶ。重力波で崩れ目の前の高速道路が跡形もなくなり、加藤はぬらりひょんを倒せたことを確信した。そして加藤はあんずの死体のところまで這い寄り、手を重ね、力つきる。社会通念とか、自意識とかではなく、ただ自分の強い意志と自主性、それが加藤の姿に感動した理由だと思う。この感動は忘れたくない。