2016-09-14

http://anond.hatelabo.jp/20160911212226

安野モヨコ浮世絵がまあまあよかったと書いた。

他の浮世絵はたいていダメとも書いた。

どうしてアニメ浮世絵とかがだいたいクズかの理由を述べていく。

いくつかパターンはあるけれど、一番多いパターンは、単純に見れたものじゃないというレベルのものだ。

そんなものが売れるのは

江戸時代から続く浮世絵の彫師摺師が作っています

っていう前書きがあるからだ。

こういっちゃなんだが、伝統工芸品というもの全般的に嫌いだ。

手で作ったからといって、伝統技術で作ったからといって、機械印刷したほうが綺麗なら、そんなもの価値はない。

元来、木版はどんな印刷よりも綺麗なものだった。

から価値があった。

おそらく、ここ数十年まではカラー印刷技術の中で最強の座を誇ってたと思う。

2枚の版木、赤、青で摺るとする。

1枚目で摺る。

1枚目の赤の版木が当たる部分、当たった部分は赤になり、当たらない部分は紙の地の白のまま、つまり2色の世界

2枚目の青の版木が当たる部分、一枚目の版木も二枚目の版木も当たった部分は赤と青が重なり紫に、二枚目の版木だけ当たった部分は青に、一枚目の版木だけ当たった部分は赤になり、当たらない部分は紙の地の白のまま、4色の世界

3枚の版を使えば、8色、4枚の版を使えば16色、理屈の上では指数関数的に色数が増える。

雑誌なんかで、表紙のすぐ下や、誌面の中頃に、一枚だけカラーページでグラビアイラストカラーページがあったりするのはわかるだろうか?

昭和の初期までは、あれを木版でやっていた。

しかも、浮世絵時代と遜色ないどころか、それ以上に15度20度と摺って色を重ねて印刷していた。板を彫って。ばれんで摺って。

しかもそれを、何千部発行したかしらないが、毎月作ってた。

キチガイ仕事しか思えない。

中でも、最もキチガイじみた雑誌はというと、毎号50度摺以上の手間暇をかけて、日本画の複製を誌面に挟んでいたある美術雑誌だ。

号によっては100度近い摺りを重ねたらしい。

色数の問題だけではない。

ほとんどの印刷技術は、オフセット印刷シルクスクリーンレーザープリントインクジェットプリントも、色の濃淡を色の粒の"密度"で表現している。

木版で使うグラデーションをつける技法は、粒ではなく無段階のグラデーションをつけることが可能である

人間が視認できる限界を超えたRetina Displayがでるまでは、真のグラデーションは木版の中にしかなかった。

そして発色である

から燃えるように強く出る色だ。

浮世絵技術で摺られた絵は、直後に触っても、手に絵の具は移らない。表面には絵の具は残ってない。

紙の繊維の奥から、輝くのだ。

いつものように、能書きが長くなったが、

江戸時代から続く浮世絵の彫師摺師が作っています

っていうことを強く打ち出した売り方だと、極端な話、出来のいい悪いに関係なく売れる。

普通印刷よりも汚くても、「それが木版の味です」として売れる。

たぶん、下絵もどんな絵なら工数ケチっても綺麗に仕上がるかなんてことも考えていないし、職方に高いレベル要求しないし、職方もそれを見抜いてそれなりの手間しかかけない。

企画元「安く版権が手に入ったから、斜陽産業職人を安く買いたたいて作らせて、オタクに高く売ろう」

職人「どうせわかりゃしないから、材料と手間をケチろう。どうせ工賃も半額に値切ってくるんだろう」

っていう思惑が誰でもわかる。

みれたもんじゃない0点の浮世絵、これがアニメ浮世絵の約8割。

実は、丁寧過ぎるのも嫌いなので、それについてもややこしいんだが、それについてはまた後日。

記事への反応 -
  • 浮世絵の記事を書き散らかしたものだが、 池袋パルコでやってる安野モヨコの原画展の売店の浮世絵が素晴らしかったので報告しておく。 この手の浮世絵の出来は大抵ひどい。 「版権...

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