夫に飲み会に行ってほしくない。
今が堪え時だと、多くの人が言っている。
会いたい人と会うことを避け、行きたいところへ行くのをやめ、耐えている人たちがいる。
少しでも感染の勢いをおさえようとする人たちが、最前線で命をつなごうと、ギリギリの中で奮闘している人たちがいる。
だから、飲み会を、お願いだから、この時期だけでも、辞めてほしい。
私は知っている。
夫が仲間たちと酒を飲み議論を交わし、夜中まで何度も話し合い肩を組んで逆境を乗り越え、ここまできたことを知っている。その時間があったおかげで夫にとって大切な仲間ができたことを知っている。
そして今、なんとか動かないと自分が所属している会社が大変なことになるかもしれないと思っていることも、「こういうときこそチャンスだ」と前向きな努力をしようとしていることも、知っている。
あなたのおかげで私たちは生活ができているし、楽しい生活を送ることができている。美味しいごはんが食べられる。本当にありがとう。
けれど、今は飲み会をやめてほしい。
夫を飲み会に誘う人がいる。本当に、今はやめてほしい。週に1回でも、やめてほしい。少人数で、個室だとしても、やめてほしい。
仕事なのはわかってる。ただのお楽しみの親睦会とかではなく、未来につながるチャンスだったり、今繋がなければいけない物事があることをわかってる。この先会社が打撃を受ける。今何か考えて、みんなで話して、手を打たなければいけない。わかる。
「飲み会も仕事のうち」だとしても、この流れが落ち着いてからではいけませんか?
本当に、お酒の力がないと、腹を割って話せませんか?
飲んで絆を深めるのはこの騒ぎが落ち着いてからでは、だめだろうか。
お酒の席は楽しかろうけれど、マスクを外し、酔って自制がきかなくなり、気は大きくなり、唾は飛び、いろいろな人や物との接触は増えるだろう。
仮に今腹を割って話さなければいけないことがあったとしても、
「じゃあ今から飲みに行って話そうか」
という流れのほうが、怖くないだろうか。こんな時に飲み会に行く文化がある会社、辞めたほうがよくない?ってならないだろうか。
ならないのか。だとしたらなんて恐ろしいんだろう。
私も、全てにおいて最前を尽くせているのかと聞かれたら、分からない。
だから迷惑をかけているのはお互い様かもしれない。私だって突っ込まれたら言い返せないところがあると思う。私だけが一方的にせめる権利はないのかもしれない。
けれどこれは、私の夫ひとりの問題ではない。
私は夫を説得しつづけるけれど、それだけでは解決しない。
現に夫に会食の連絡を入れる人がいるのだ。
「大事な話だ、飲みに行こう」という人がいるのだ。
彼らの家族はどうしているんだろう。そこを知っても仕方ないのだけど。
彼らの家族が皆「しょうがないね、仕事だもの」と言ったのだとしても、私は夫に「なるべく行かないでほしい」と言い続ける。
いつまでこんな状況なのか分からない。飲み会の席でいろいろ積み上げてきた人たちは辛かろう。いつになったら大手を振って飲みにいけるかわからない。
でも、「この数週間が勝負」と言われていて、飲みに行く、出かける人が増えてしまったら、「この数週間」が「この数ヶ月」「この一年」と一気に増えしまってもおかしくない。
そういう状況に、私たちは置かれている。
夫は「自分みたいな考え方のほうがおかしいのはわかってる」という。自分がイレギュラーなのだと言う。でも、だからなんだというんだろう。夫がイレギュラーかどうかは、我が家には関係ない。夫は一人しかいないんだから。どうしても、ここだけは夫婦の考え方が相入れない。
夫がいくら飲み会に行かなくなっても、在宅ワークにできたとしても、どこからともなく感染する可能性はある。買い出しに出た私が感染することだってある。どうしようもなく誰かが感染してしまうこともあるかもしれない。
夫は飲み会をものすごく減らしているようだけれど、できればリスクをもっとおさえたい。もっと、もっと。
「飲み会だけ目くじらたてすぎでは」と自分でも思う。けれど、どこの誰ともしらない人たちが集まるところで(仮に会社にいるより少人数規模だとしても)、ちょっと離れた席で知らない人たちが同じように酔っぱらい、注意が散漫になる環境にいてほしくない。怖すぎる。どうしたら伝わるだろう。
彼らはまだ子どもなのに、一緒にいてもあげられず、知らない大人たちに囲まれて、苦しみの中独り闘うのだろうか。そう文字にするだけでもう泣けてくる。どうか彼らが健やかでい続けられますように。笑顔で、家族みんなで一緒にこれからも過ごせますように。
届かないかもしれないけれど、私は本当に飲み会を今はやめてほしいです。仕事に行かなきゃいけない人たちがいることはわかります。出勤もできればやめてほしいけれど、それじゃ仕事にならないだろうから、祈りながら毎日見送っています。いつも本当におつかれさまです。
大切な話が今こそ出てしまうこともわかります。会社が潰れれば多くの人が大変なことになります。それこそ、病に命を奪われてしまう前に、生活ができなくて命が危なくなることもあるでしょう。
それは避けなければいけない。本当にみんなにとって難しい局面なのだと思います。私には、想像することしかできません。その想像も陳腐で、まったく理解が及んでいないとは思います。すみません。
けれど、できれば、会議室でマスクをして、落ち着いて話をしてほしいです。
「今はこんな時期だから、乗り越えてまた美味い酒を飲もう」
わかります。努力不足で、本当にすみません。これからも私は夫に気持ちを伝え、できる限り信頼性の高い情報を選び取り、それを見せつつ説得していきます。人様にお願いする立場にないことを少しは理解しているつもりです。本当にごめんなさい。
それでも、お願いです。
夫を飲み会に誘わないでください。誰も飲み会に連れて行かないでください。みんな、行かないで。
「鬼嫁がいるからダメだな」と言ってもいいです。鬼嫁です。夫の苦労や家族のための努力をそっちのけに、我儘を言っているところもとてもあります。
ヒステリックかもしれません。それでもいい。飲み会をやめてください。お願いです、もう少し、もう少しだけ、「飲みの席でないと」という気持ちを堪えてください。
今はただ、必要以上の外出をしないでほしい。
移動すればするほど、リスクが高まるのではないでしょうか。会社と必要な取引先と、家の移動だけにできないでしょうか。
それぞれに大切な人たちがいるはずです。大切な人を守るために、「移らないように」ではなく「移さないように」、できる限りの行動を皆でしていきたいです。
そうして落ち着いて、
「ああ、本当にたいへんだったね」
と笑ってみんなで言い合える日を、気持ちよく夫を外へ送り出せる日がくることを願っています。
妻として本当に情けないです。説得を続けます。1日も早く夫が協力してくれるよう全力を尽くします。
うんち
さげまん