2015-08-14

無趣味なやつは翻訳趣味しろ

 英語力は中学レベルでかまわない。むしろ、低めのほうがいいのかもしれない。英語をスラスラ読める人がやっても作業っぽくなるだけかも。

 何か適当短篇集か、小説に興味がなかったらノンフィクション(これも短い話のつまったやつがある)、とにかく自分の興味のある分野の洋書を一冊選べ。なるべくなら読んだことのない、訳されたことのない未知の文章がいい。知っている作家の知らない作品。知らない作家の知らない作品。なんなら技術書教科書でもいい。別に興味のない分野でもいい。おまえの問題だ。なんでもいいが、比較的短いものコレクションがいいかもな。

 

  

 本が手に入ったら、とりあえず最初の一話を頭から読んでいけ。

 おおまかなあらすじを適時メモにとって、気になったフレーズや一文をまるごと仮訳しろ

 とにかく初読は全体の輪郭をつかむことが大事だ。

 最初段落からして何の話をしているのか理解できない? あたりまえだ。小説ってのはそういうもんだ。最後まで読んだら、八割とはいかなくても六割くらいはわかる。それでいい。

 どうしてもわからない単語熟語があれば、辞書で調べろ。グーグル検索がいいかもしれない。辞書にはない俗語もわかるかもしれない。固有名詞には画像検索有効活用しろ

 時間は当然かかる。安心しろ試験じゃないから、わからないところを調べる時間たっぷりある。脱線もあるだろう。目的を見失っていつのまにかwikipediaを熟読するだけになることもあるだろう。それでいい。ゆっくり読め。途中で投げ出したり飽きるのも自由だ。

 時間はびっくりするほど早くすぎていく。

 とりあえず根気がつづいたとして、一話分読み終わるころにはあらすじメモの山ができているはずだ。

 既読部分をパラパラめくって復習しつつ、そのメモを清書しろ

 ここまででだいたいのストーリーを把握できる。

 もっとも、そのストーリーが合ってるかどうかの保証はできない。どうでもいい。よしんば間違っていたところで誰の害になるわけでもない。気にするな。

 重要なのは、何かを理解した気になれることだ。

 ちょっとした達成感だ。

 あらすじを清書すると一定の満足感が芽生えて、別に逐一訳さなくてもいいか、という気分になってくる。

 その気分に流されるのもいい。

 誰も強制はしない。

 イングリッシュハイになってまだまだテンションうほほーいですぞ〜って人間だけ全文訳せばいい。

 全文訳すと、とりあえず、ブツとして成果が残る。

 成果は他人の目に晒したくなるのが人情だが、ちょっとまて。よほど古い文章でないかぎり、うっかりネットで公開すると権利からクレームのつくおそれがある。気をつけろ。

 とはいえ、ちょっとした物好きの友達に読ませるくらいは多分オーケーだ。

 もっと文学密輸業者きどりで友達家族ブツを渡したところで読んでくれるとはかぎらない、というか、まず読まれない。くじけるな。素人が訳したクソみてえな文章を読まされる身にもなれ。おもいやりが大事だ。他人に読ませるなら、ちゃんと読みやすいように推敲するのを忘れずにな。めんどうくさい? なら読ませなければいい。

 なんにせよ、二次利用二次的な目的にすぎない。

 さて、とりあえずおまえは未翻訳文章を一話訳した。おまえはささやかながら、文化に貢献した気になる。実際はささやかな功績すらなく、完全な自己満足にすぎない。その感覚大事だ。気分が大切だ。

 おまえは次の話を訳する気分だろうか。

 そうじゃないならその本を投げ捨てて別の暇つぶしを見つけよう。それか、また別の洋書をみつけてまた最初の一話だけ訳すのもいい。歌の歌詞でもいいな。

 同じ本の別の話を訳したいなら遠慮無くそしろ

 繰り返していけば、大雑把なメモがきにしろ、清書した全訳にしろブツが積み重なる。

 ペーパーの重量あるいはデータの容量の蓄積に反して、おまえの英語力はたいして上達しないかもしれない。

 あるいはまったく上達しない。

 それでいい。有用性の証明人間的成長はおまえの義務ではない。

 その日のその日のささやかな進捗、ささやかな満足以上のものを望むのでなければ、素人翻訳趣味にするのもいいだろう。

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