はてなキーワード: 新藤恵美とは
周囲に笑いが巻き起こった。
この時代にわざわざプログラミングを自分で、あまつさえその解説文さえも自分で打とうとする人間がいるのだから。
「君ねえ……そんなのAIにちょっと命令すれば数秒で終わる仕事じゃないか」
呆れて物も言えないながらも、物を知らぬものに何も言わねば変わらぬのだから仕方ない。
そんな気持ちが声の調子から目線から口元からとそこかしこから漏れ出ていた。
「それじゃあどうして僕が来るまで終わらなかったんですか?」
「まあAIと言っても万能ではないからな。適切な命令文をこっちで考えてやる必要があるし、若干ガチャの要素があるから上手くいっているかは実際に動かさないと分からないじゃないかそもs」
「そもそもも何もこれぐらいのコードなら動かさないでも挙動ぐらいは分かりますし、こんな分かりやすいバグだったらガチャらずに直接直したほうが早いでしょう?」
プログラマーの定義が『AIにプログラミングの指示を出す人』という意味に取り変わったこの時代にこんな言葉を聞くなんて誰も思っていなかった。
だが、偶然かペテンか、結果だけを見れば増田の言う通りなのだ。
あっ、駄目だ。
メンドクセ。
残りはAIに書かせよ。
「それにさっき言ってましたよね?AIには任せられない理由があるって。つまりAIだと時間がかかりすぎるんですよね?だってAIですもんね」
「うっ……」
確かにそうだ。この程度の作業ならAIに任せても1分もあれば十分だ。
しかし今ここでそれを認めてしまうことは増田の主張を認めることになるのだ。
増田の言っていることは正しい。
「いや、しかしだな……」
反論しようと言葉を探している男だったが、それを遮るようにして彼は言った。
それは今まで黙っていた女性の声であった。
「えっと、どちら様かな?」
男は少し困惑しながら訊いた。
「私は新藤恵美といいます。一応ここでは研究主任を任されています」
男が納得すると同時に、増田が嬉しそうな顔をしていた。
「それで、何か用かね?」
AIなんぞに頼っててもデタラメなガチャを必死に回し続けるだけになるよねって話はしたけど、本当にAIにそれやられると困ってしまうな……。
いやでもこれでいいのか?
星新一なの?
俺はエヌ氏じゃなくて増田なんだけど?