2024-08-17

姉は私の姉である 〜3度の天丼の向こう側〜

私には姉がいる。先に言っておくと、私は自他共に認めるシスコンだし、なんやかんやで姉も私のことが大好きだ。でないと私の頭皮匂いを嗅ぐのが好きだと言って、バイト終わりの煙草臭にまみれた頭皮臭いを嗅ぎ「うっ……でもこれもいい!」と再度嗅ぎ直すようなことはしないはずだ。(※私が知らないだけで重度の臭いもの好きだった場合を除く)

高校生くらいまでは実はそんなに仲が良くなかった。奇声を発して廊下や外を走り回る私と、真面目で優等生な姉。しかし私は歳をとるにつれて少しずつ常識を学び、姉はオモロい友人に囲まれユーモアが身についた。それに伴い話が弾むようになり、今ではすっかり心を許し合い、ちょっかいを掛け合っている。

さて、姉は結婚出産きっかけに実家から離れたところに住んでいる。対する私も実家を出て一人暮らしだ。姉と過ごす時間はかなり減った。

私は結婚出産もまだだから、もし話を合わせられなくなって、たまに会えた時も全然さなくなったら辛いな、と心配していた。

が、お盆休みに姉・姪、そして私が実家に帰ると、そんなことは杞憂だったことがすぐに分かった。姪の面倒を見る合間にくだらない話をいっぱいした。ちょっかいをいっぱいかけた。私の心は完全に緩み、ついにかつてのような「思ったことをなんでも言い、したいことをすぐにする」モードを取り戻した。

ソファで二人で並んで座っている時、私は頭を綺羅星のように駆けていったワードを、そのまま口から飛び出させた。

「私、ウーパールーパーの"ルーパー"の方ね。お姉ちゃんは"ウーパー"」

言い忘れていたが、私は常にこのようなくだらないことを考えている。署名料って言葉トゥメイトゥに激似だなとか、大便ってBigBenっていうとすごく偉大に見えるなとか、そういうことを。

姉は目を合わせたきり無言だったが、ぽつりとしゃべった。「…ウーパー」

ルーパー」私は返した。姉は大変順応が早い。もう一度姉が言う。「ウーパー」「ルーパー♪」今度はちょっと声を高くして返した。「ウーパー」まさかの3度目である。「ルゥペァア…」いやにいい発音で返してみた。

私はとっても満足していた。周りの友達ならこうはいくまい。ハ?と半笑いで言われるか、よくても1回このくだりをやって「なに〜?これ」と笑われて終わるだけである。それを我が姉は即座に3回繰り返した。やっぱ姉妹ってこういうことなんだよナ… ほんのりニヤけていると、姉が、突然苦しそうに顔を歪めた。

「ウッ………!」

胸を抑える姉。その瞳が私を捉えると、絞り出したようにこう続けた──「……パァ……」

私は打ち震えた。3度だ。姉はすでに、ウーパールーパーのくだりを3度繰り返しているのである常人であれば、「なんかしらんがこれだけやれば満足だろ」と思う回数である

だか、姉は私の姉であった。私の突拍子もない言葉についてくるどころか上を行った。3度の天丼の末、ボケを投げかけてきた。

姉はなんと素晴らしいのだ。こんなにも私に楽しいことを提供してくれる。私は喜びを噛み締めながら、そのボケに答えるべく息を吸った。「──ルパァァーーーー!!!

イメージとしては、撃たれてしまったウーパーに対し事実を受け止めきれずに叫んでしまルーパーである。姉の渾身のボケに応えるべく、迫真の演技で叫んだ。

叫び終わると二人してゲラゲラ笑い、大声にびっくりした姪が「なにしてるの〜?」と寄ってきた。くだらないし伝えたとしても「だから何?」としか思わないような話なので、なんでもないよと誤魔化した。

だが、私はこれがとても楽しかった。同時に、意味のわからないルールに鋭くボケを打ち込んでくる姉に深い敬意を抱いた。どうか姉の素晴らしさを、他の人に少しでも知ってほしい……。そんな想いを込めて、本記事を書かせていただいた。うちのお姉ちゃん、おもれ〜ぞ!

  • なんだっけ、リアル阿佐ヶ谷姉妹?ってこんなかんじ?なの?か?

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