上記の行為について、いまツイッター上で体験談が話題?のようです。
犯人が捕まって家宅捜索されたとのことですから警察が動いているわけですが、警察が捜査をするためには当然ですが何らかの犯罪が成立している必要があります。
しかし、正直なところ、上記行為だけでは何らの犯罪も成立しないと考えざるを得ません。その理由を述べます。
1 「傷害罪」が成立するのか
まず考えられるのは傷害罪かと思います。睡眠導入剤を飲ませて傷害で逮捕された、というニュースがネットなどでも出てきますね。
しかし、法律上、傷害罪が成立するためには、人の生理的機能に障害を与えた、という結果が必要となります。
小難しい言い方ですが、要するに、実際に睡眠導入剤を飲ませて眠らせるなどしなければ傷害罪は成立しない、ということです(なお、傷害罪に未遂はありません)。
そうすると、睡眠導入剤が実際には入れられていない本件では、傷害罪は成立しないと言わざるを得ません。
2 他の罪は成立するのか
過去には、「夜行バス内で隣の人の飲み物に睡眠薬を入れたところ、女性が気付いて通報したため、準強制わいせつ未遂で逮捕した」という事例があるようです。
また、人を眠らせてお金を取ろうとしていた場合には、昏酔強盗未遂罪が成立するかと思います。
このように、人を眠らせたうえで何らかの犯罪をしようとしていた場合には、その人を眠らせた時点でその未遂罪が成立することになります。
しかし、本件でこれが当てはまるかというと難しいように思います。
まず、夜行バス内の事件については、バスの車内とはいえ夜行バス内では他の客に注目することはほとんどなく、隣席の人とは長時間一緒にいることになります。
したがって、夜行バス内で睡眠薬を飲ませようとした時点で、わいせつな行為などの犯罪をする危険性はかなり高くなったといえます。強盗についても夜行バス内では同じことが言えます。
しかし、本件では、その状況からして通常の路線バスと思われますが、路線バス内で睡眠導入剤を飲ませたとしても、その人がどの時点で眠るのかわかりません。
バスの中で眠ってしまうのかもしれませんし、バスから降りて目的地に着く途中で眠るのかもしれませんし、目的地に着いた後で眠るのかもしれません。あまりにも不確定です。
したがって、通常の路線バス内で睡眠導入剤を飲ませたとしても、眠っている人に対して何らかの犯罪を行う危険性が高いとはいえず、人を眠らせたうえで何らかの犯罪をしようとしていたと認めることは難しいように思います。
その他、迷惑行為等防止条例などにおいても、今回のような行為を処罰する規定はないかと思われます。
異論反論受け付けますので何かご指摘等ありましたらよろしくお願いいたします。
なお、念のため付言しておきますが、過去にも似た事例があったように、このような事件は間違いなく起こり得るものであり、注意喚起は極めて重要です。
今後誰かが同じような事件に巻き込まれた際に、「この事件では捜査がされたのになぜ今回は捜査がされないのか!」と警察や検察が責められるのは妥当ではない、と思いこれを書きました。
嘘松なんやろなあ