友達はもともと油絵を描くのが好きな人で、言外にイラストをバカにしてるところがあった。
まぁ、そういう人っているよね。
彼の絵は好きだったし、他の趣味やら考え方もあったし、そこは好みの問題と思ってかなり仲良くしていた。
ちなみに自分は典型的なオタクで、昔から人物イラストは模写したりデッサンやったり多少している。上手くないのは自覚していたので字書きがメインで、たまに細々と描いて満足している。
彼がハマったアニメのイラストを描くようになったのは最近のことだ。
イラストと言っても、ラフ段階くらいで線画にすらせず投稿するような感じ。そういう絵のスタイルというわけでもなさそうで、ごく稀に線画まで仕上げることもあった。
一度投稿し始めると、マイナーなアニメのファンダムの中で絵描きは貴重なようで、交流もするようになったらしい。彼も楽しいオタクライフを送るようになったんだなーと思っていた。よかったよかった。ここで終わればよかったのに。
前述のように自分は彼の絵が好きなので、絵に関してはいつも褒めていた。
イラスト描き始めの頃も、「イラストは初心者だから見てほしい」と自信がなさそうにしていたので、褒め続けた。
やっぱりたくさん楽しく描くのが一番だと思うし、もともと絵の得意な彼のことだからイラストも上手くなっていくだろうな、と楽しみにしていた。
一度だけ、イラスト描きにありがちなミスを見つけたので指摘した。キャラクターの傷の左右を間違える、のような感じの。プロでもやるようなミスだと思う。上手い下手の問題でもなし、字書きにおける誤字のようなものと思った。自分だったら指摘してもらいたいと思ったからこそ、こっそりと伝えた。
が。
彼はめちゃくちゃ不機嫌になった。
いわく、ミスではないと。前述の通り彼のイラストはラフのような絵なので、不必要な線がたくさんある。そのうちの一つがミスのように見えてしまったようだ。
すぐに謝ったが、指摘が細かいと言って怒りを引きずり続けた。
その時点で賞賛しか受け付けない人なんだな、上手くなりたいみたいなのはないんだな、と諦めていたのだが、さらに腹の立つことがあった。
どっぷりとファンダムに浸かっていった彼は、解釈違いの他人のイラストを「こんなん(描くの)ありえない」とわざわざダウンロードして送りつけてきたのだ。
そのイラストは愛を込めて丁寧に描きあげられた作品だった。表情にも構図にも工夫のあとがみられる。上手いわけではないかもしれないが、多少なりともイラストを描いた経験があれば、どれほどの熱量と努力の下に編み上げられたものかと想いを馳せてしまうような素敵なイラストだ。
自分も解釈違いというのにはうるさい方ではある。し、そのイラストが解釈違いなのは同意する。
けれど、特定個人の愛と努力の結晶をあげつらうのは、それはちがうだろうと。
オタクとして、他人の作品に最低限の敬意を払うのは礼儀じゃないか?
なんというか、彼の努力のしなさっぷりも含めて、イラストというものをバカにしているのではないかとすら思った。
それ以外にも自分のプライベートに対する失礼な言動があって距離をとることにしたのだが、いまだに彼のオタクとしての在り方に対する怒りが尽きない。
はぁ……ずっと仲良くしてたんだよ、本当に。大好きだったし。
悲しい。