IQが20離れてると会話が成立しなくなるらしい。俺は今それをひしひしと感じている。もちろん、相手が高い方で、俺は低い方だ。
賽の目が神懸かっていたおかげで、高校受験、大学受験、就職まで、自分の実力以上の非常に良い環境に身を置くことができた。高校は進学校だったし、大学は宮廷、就職先は誰もが知っている大企業だ。もちろん要所要所で努力はした。でも、変に本番に強い性格と強運のおかげだと思う。普段は超不真面目だから、高校大学入学先、就職先とも、友人に伝えたときはえらい驚いてたもんだ。両親でさえ、高校大学受験で合格を伝えた時はえらい驚いていた。
ところが、そんな強運な俺は今非常に困ったことに直面している。入社して5年目になるが、シンプルに仕事についていけなくなってきたのだ。今までは受験、就職面談といったターニングポイントで最大瞬間風速的にパフォーマンスを発揮すればよかったが、社会人はそうはいかない。コンスタントなパフォーマンスを求められる。無能な俺にはこれがすごく辛い。
根が不真面目であることもだけど、地頭が悪いことが特にネックになっている。周りとの会話についていけない。大企業のそれも花形部署に入ってしまったばっかりに、周りには超有能しかいない。有能は有能同士でささっと話を進めて仕事をどんどん進めてしまうから、無能な俺はついていけない。
IQが20離れていると会話が成立しないというが、俺と周りの人とはそれぐらいは離れていそう。毎回、英語のリスニングテストばりに集中して聞かないと会話を理解できない。話されているのは日本語なのに。「基本的な質問で申し訳ないのですが...」って言って、基礎の基礎みたいな質問ばかりしている。辛い。辛いが、一番辛いのはそんな無能にも快く説明してくれている周りの有能たちだ。みんな時間とっちゃってごめん、ありがとう。
有能ばかりに囲まれていると、自分の価値ってほんとねぇなって思ってしまう。自分に支払われている人件費で、もう一人有能を雇えば仕事の回転率はさらに上がるはずだ。だからといって、さすがに会社を辞めようとは思わない。俺にも生活があるから。
世の有能達、ごめんな。君たちが作った基盤に乗っかるだけの無能だ俺は。「俺にも生活があるから」とかもっともらしい理由をつけて寄生してごめん。こんな弱くて無能な俺を、どうか許してくれ。