めちゃくちゃ流行っているあの病が、私の職場にも流行っている。今まではパーテーションも付けずアルコールも置かずとも偶然乗り越えてしまった(働いているひとりひとりの対策の賜物だという意識は会社には当然ない)ので、今回の新型も大丈夫だろうと思っていたのだろう。
会社に着くまではマスクをしているらしいが、会社内で役職持ちの人間は全員ノーマスクだった。私を含む平社員はずっとマスクをしている。結果、課長が1人熱を出したのをきっかけに役職持ちの奴らは全員感染した。ざまあみろだ。苦しいからとかいう小学生みたいな理由で外してるからそうなるんだ。まあ、そんな風に嘲り笑えたのも初日だけだったが。
それから毎日本当に大変なんて言ってる余裕もないくらい、ギリギリで回していた。平社員だけで回せるわけがないから指示する上の人間がいるはずなのに、平社員が回している。お昼ご飯を久しく食べられなかった。その間にも何人か役職持ちから移されたっぽい感染者が出た。マスクしてても移ることを実際に目にして、怖くなった。
さすがにヤバイと本部が思ったのか、急にパーテーションとアルコールとマスクが送られてきたのは笑った。こういう事態を防ぐためのもののはずなのに、今更かよ。遅すぎる。私たちだけ1年以上前にタイムスリップしたみたいだった。
役職持ちの奴らは、お盆に沖縄に家族旅行に行ったり、同窓会をしたと自慢げに話していた。私はもう半年以上、家と会社と近所のスーパーにしか行っていない。何本も見たかった映画を我慢して、行きたかったライブも中止になり、ずっと楽しみにしていたイベントも延期になり、外での娯楽なんて久しく楽しんでいない。どうして自分より遥かに充実した日々を過ごしたはずの人間の尻拭いを、ずっと我慢している人間がしなきゃいけないのか。冷静に考えると狂いそうだった。
そんな生活で2週間くらい経った先日、役職持ちが何人か自宅待機が解けて帰ってきた。さすがに改心してるだろうと期待して部屋を覗くと、全員晴れやかな笑顔で白い歯を見せていた。
「インフルエンザのほうがきつかった」「世間が騒ぎすぎなんだよ」「こんな軽い病気に怯えるのは馬鹿馬鹿しい」
そんな話をされた気がする。あまりにも怒りと呆れが強すぎてあんまり覚えていない。殴らなかった自分を偉いと思う。好きなものにお金を使うためだけに働いているという気持ちだけが、明日も私をこの地獄へ足を向かせる。
お前が勝手に我慢してただけじゃん コロナ脳は人のせいにするなよ