2021-03-25

二乗して0になる実数は0だけ」をどう証明するか

https://www.ajimatics.com/entry/2021/03/22/174633

これについていたブコメ

id:versatile実数の中には、「2乗して0になる数」というのは0しかありません」の証明ってどうやるの?

が、ちょっと面白い問題だったので参戦。

メタブを見に行ったら、そういう数が存在した場合は逆数をとると矛盾が引き起こせるよっていうスマート背理法が書かれてたんだけど、これはかなり危うい議論に見える。

というのも、その議論は0でない実数は必ず逆数が取れるよねっていう前提を所与のものとして扱っているわけで、じゃあその「0でない実数は必ず逆数がとれる」って命題はどうやって証明するのという話になる。

そんなの当たり前の話じゃないかと感じられるかもしれないが、我々の証明しようとしている「二乗して0になる数は0以外にない」という命題も同程度には当たり前のことであって、つまりこれは当たり前から当たり前を示す、基礎論的なところの問題なのである

こういう議論では、話の土台が何より重要で、よく知られた性質の中でもどれは使っていいのか、どれは使ってはいけないのか良く整理してから始めなければいけない。

なぜなら証明済みの性質を贅沢に使って基礎的な部分を証明してしまうと、その元の議論のほうの前提に実は今証明している命題が間接的に入っているんだよということになりかねない。

これは循環論法になってしまう。

から、「当たり前のものを示す時」には、議論が「逆流」しないか十分気にする必要がある。

で今回の問題が具体的にどう引っかかっているかと言うと、実数には有理数という土台があって、有理数整数という土台から作られている。

ここでもし、「二乗すると0になる0でない数a」が【整数の中に】含まれていると、有理数上で、(1/a)*(1/a)の答えが定義できなくなってしまう。

そうなるとそもそも有理数上の掛け算の定義が壊れているということなので、実数構成どころの話じゃない。

まりこの掲題の疑問は有理数に掛け算構造を与える際にこそ気にすべき問題なのである

逆数という概念は掛け算の成立後にようやく有効になる話であって、その前段階にあるはずのこの疑問に対して逆数の性質を使ってしまうのは若干論点先取というか、真芯を外している回答のように思う。

もちろん実数の話であるからには土台にある有理数基本的性質所与のものであるという考え方も間違いではないけれど、それはこの疑問の「心」が見えていないんじゃないかな。

で実際どうやって証明すべきかというと、まずは上述のように【整数で】この性質を示すべき。

もっと言うと整数の土台には自然数(ここでは0を含む)があるので自然数上で非0×非0が非0になることを示す。

そうして得られた性質整数有理数実数へと順々に拡張していく。こういう流れになる。

自然数上での証明は、0でない自然数には前者関数Preが適用できることを用いて、

a*b=a*Pre(b)+a≧a>0

という感じで示せる。(もちろんもっと厳密にやるけどね)

整数自然数コピーを貼り合わせてできている。自然数上での非0×非0=非0という性質から整数上でも容易にそれが示される。

有理数整数分子分母のペアに約分という同一視を入れてできている。ここでも整数上の非0×非0=非0の性質簡単有理数上に拡張できる。

最後実数は、有理数無限数列を極限の考え方で同一視してできるので、有理数上の性質をうまく実数上にも持ってくることができる。

概要だけざっくりだけどこれを組み立てれば疑問への回答になると思う。

道筋だけ最後まで立てられることがわかったら途端に興味を失うやつ)

追記

文章が長ったらしくて申し訳ないけど、やっぱ伝わってないね…。

前半部は、「当たり前のことを証明する時には当たり前の前提を無批判に使っちゃいけない」ってことを言ったつもり。

ブコメで貰ってる「両辺をaで割って〜」っていうようなのも、実は割り算の存在無意識に前提とされているけど、零因子があるかないかっていうのは【割り算の構成のためにこそ】必要な話なんだ。

から「割り算というもの存在する」って無邪気に考えることすらもこういう問題では危険だよと言いたかった。

零因子がないことを証明→よかった、これで割り算が「上手く定義」できるぞ→逆数も定義できるぞ

という話なんで、第一段階の証明のところで割り算の存在を前提にしては議論が逆流してしまうのです。

  • 事情通に聞くと良い

  • ブコメが的外れすぎてウケる

  • 自然数←ペアノの公理 整数(負の数)←グロタンディーク構成 有理数(分数)←整域の商体 実数←距離空間の完備化

  • 数学科の基礎訓練と、物理や工学系のアプローチ(道具として使う数学)は異なるよね 最近はやりのSTEMは後者だから、前提条件の説明は長くなっても仕方ない

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