2020-09-29

森の夢

本来であれば1年遅れの東京オリンピック開会式が改めて開かれているはずだった2021年7月23日…

2020年の秋冬を経て、本邦における新型コロナウイルス感染者は爆発的かつ不可逆的に増加し、盛夏を迎えても繁華街からはパッタリと人が消えたままだった

がらんどうの新国立競技場スタジアム、森の手元のスマートフォンでは「#エア東京五輪開会式」がトレンド入りした旨のバナーが表示され、動画サイトニュースキャスターは眉間に皺をよせて「オリンピック開催中止の責任は一体誰が取るんでしょうか?」と嘆いている。

最後の総括会議を終えマスク姿のままうつむき、無言で三々五々帰路につく実行委員達を見送り東京五輪組織委員会会長の森は新国立競技場のベンチに座り独り泣いていた。

ラグビーW杯成功で改めて手にした栄冠、喜び、利権、そして何より承認欲求

それらを東京五輪で得ることは殆ど不可能と言ってよかった

「一体どうすりゃよかったんだ…」森は悔し涙を流し続けた

どれくらい経ったろうか、森ははっと目覚めた

どうやら泣き疲れて眠ってしまったようだ、木のぬくもりが売りだという触れ込みである、ベンチの冷たく固い感覚現実に引き戻した

やれやれ電通のアイツには何て説明しようかな」森は苦笑しながら呟いた

立ち上がって伸びをした時、森はふと気付いた

「あれ…?お客さんがいる…?」

ベンチに座る森が目にしたのは、新国立競技場の観客席を埋めつくす世界各国の超満員の観客だった

各国の国旗が千切れそうなほどに振られ、地鳴りのように君が代が鳴り響いていた

どういうことか分からずに呆然とする森の背中に、聞き覚えのある声が聞こえてきた

「森さん、早く会長挨拶をしてくださいよ」声の方に振り返った森は目を疑った

安倍前総理?」 「なんだ森さん、式典中に居眠りでもしてたの?」

麻生さん??」 「森さん、勝手安倍総理を退任させちゃダメですよ」

竹田恆和さん…」  森は半分パニックになりながら最新鋭のLEDがふんだんに使われている大型スクリーンを見上げた

welcome to TOKYO Olympic 2020!!!!

暫時唖然としていた森だったが、全てを理解した時、もはや彼の心には雲ひとつ無かった

「開けるぞ!東京オリンピックを開けるんだ!」

安倍からマリオ帽子を受け取り、山崎貴演出を手掛ける舞台の真ん中へ全力疾走する森、その目に光る涙は悔しさとは無縁のものだった…

翌日、ベンチで冷たくなっている森が発見され、吉村村田病院内で静かに息を引き取った。

  • くぅ~疲れましたwオリンピック中止です! 実は石原都知事から招致の話を持ちかけられたのが始まりでした 本当は東京の気候で真夏にオリンピックが開催できるわけがなかったのです...

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