語り部となった老人はまだ子供だった当時、パーマを掛けた女性に石を投げはやしたてたそうだ。
それが許される時代だった。それでもこっそりと「闇パーマ」をかける女性はあとをたたなかった。
その記事を読んで、なんだか心が落ち着かなかった。
7月頭からリモートワークを再開して、そのまま夏休みに入った。
夏休みといっても旅行に行くわけでもないしネット配信のドラマをみるくらいしかすることもない。
なんだかくさくさして近場にある新しくオープンしたカフェに行ってみた。
朝なら空いてるかと思って早起きして行ったのだが、役所が近いせいか、道中思いの外たくさんの通勤者とすれ違った。
その人たちをぼんやり眺めながら、別にこの人たちは私に害を与えるために働いているわけではないのだなと思った。
通勤している人たちはコロナを蔓延させて私に感染させるために働いているわけではないし、家にいて自粛している人たちは私を守るために自粛しているわけではない。
テレビのニュースでは海水浴場でスキーのマスクみたいのをかぶった人たちが取材に答えて「このマスクをかぶっていれば安心です」と言っていて、バカなんじゃないかと思った。
まああの人たちはバカなのかもしれないけど、すべての人がバカなわけではない。
コロナが心配で、感染してしまったらどうしよう、嫌だなあと思いながら通勤している。それが自分の生活だから。
なんだかんだ言われながら夜も営業している飲み屋の店長とかもそんな感じなんだろう。
友人は5月の緊急事態宣言の始まる前に、感染が怖いからと自ら職場を辞めてしまった。
それ以来、ずっと家にこもったまま、週2回スーパーに買い物に行くだけの生活を続けている。
家族が協力的でないと腹を立て、自粛しない世間に腹を立て、情報が操作されていると腹を立て、ネットで情報を検索しては怯えている。
何が正しいのかなんて、80年くらいたった後にわかるんだろうな。当時の人々はなんて愚かだったんだって、未来の誰かが笑うんだろう。
まあその頃まで人類が生き延びていればの話だけど。