2020-06-15

フラれた彼女の家にジーパンを取りに行った話

私が彼女と付き合い始めたのは高校3年の夏頃であった。

私達は受験を控えていたので、付き合ってはいたが頻繁に会うことはなく勉強に取り組んだ。

志望校にことごとく落ち落胆していた私だったが、滑り止めは流石に受かっているだろうと考えていた。

そして、滑り止めの合格発表日が訪れた。その日はバレンタインデーであった。

彼女から渡したいものがあると言われ、私は駅へと向かった。

その駅に向かう途中に私は合否確認を行った。結果は不合格であった。

私は浪人を決めた。

彼女と会うとチョコレートを渡された。「ありがとう」と私は言った後に、浪人する事を伝えた。

すると彼女からこう言われた。

「私はもう進路決まりました。残念ですが、別れましょう」

そうして彼女は帰りの電車に乗って行った。


人生で初めてフラれた私はひどく動揺した。

もらったチョコレートチャリを漕ぎながら道端にぶん投げた。

そして私と彼女との関係は終わった。


浪人生活が始まってしばらく経った5月頃、彼女から連絡があった。

「やっぱりよりを戻したい」

アホな私は承諾した。

高校時代彼女とはプラトニックな付き合いをしていたが、気がつけばそのような関係性も終わっていた。

行為というのは完全に脳をアホにするのかもしれないと当時の私は真剣に思うほどであった。

夏までは猿のように性行為に勤しみ、それに反比例するように私の成績は落ちていった。

流石にまずいと感じた私は、9月頃から彼女と会う回数を減らしていった。

受験が終わったらたくさん遊ぼう、今は勉強に全力を出すよ」

こんな事を彼女に伝えながら1ヶ月に1〜2回程会っていた。


そして年が明け、センター試験まであと1週間といった頃、彼女から連絡があった。

「新しい彼氏が出来たから、別れてほしい」

その時の私は怒りというよりも、もうどうでもいいという気持ちの方が強かった。

センター試験前に動揺させるような事をしやがってというぐらいの気持ちであった。

ただの学生浪人生の付き合いであったので、家の鍵を渡しているような事もなく、私はスムーズに承諾するはずであった。

しかし、私は急にその存在を思い出した。

ちょっと待って、ジーパンを取りに行っていいか?」

私は小柄な男性なので、彼女ジーパンを共有するほどである

彼女が私のそのジーパンを気に入り、自分ジーパンのように履いていたのだ。

「いや、もういいでしょ。ジーパンはもうしょうがないと思って。彼氏も今家にいるし。」

「いや、ダメだ。今からジーパンを取りに行く」

私は彼女の家に向かった。

すると途中で見知らぬ番号から電話がかかってきた。

「おい!お前気持ち悪いんだよ!家に来んなよ!」

恐らく彼女の今の彼氏だろう。

「俺はお前に用ない、ジーパンを取りに行くだけだ」

電話は切られた。

そして彼女の家に着いた。

見た事もない軽自動車が止まっていた。その車のフロントガラスの内側にキ○ィちゃんぬいぐるみが置いてあった。

私が今に至るまでキ○ィちゃん人形を見ると殺意が湧くのはこの為である

彼女から電話が入った。

「私の自転車のカゴにジーパン入れてます。取ったら早く帰ってください」

私はジーパンを手に取ると安堵した。

彼女と新しい彼氏は、窓から私を見ていたのかもしれない。

私が本当にただジーパンを取りに来ただけである事を確認して安堵しただろうか。

彼女文句を言うでもなく、新しい彼氏に殴りかかるわけでもなく、私はただジーパンを返してほしいという気持ちであった。


帰り道になんだかよくわからない政治家ポスターを見ていると、思いっきり蹴り破りたくなった。

しかし私は思いとどまった。そういった行為は罪に問われる事を思い出したのだ。

「俺はもうジーパンを取り返したんだ。今後の人生をより良いものにしてやる」

そんな事を思いながら帰路に就くのであった。

こんな事が起きてしまったのか自分学力足りなかったのか、センター試験の結果は散々であった。

しぶしぶ国立大学は諦め、私は私立大学赤本を開くのであった。


その彼女名前は果穂という名前であった。

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