「皆よ、案ずるな。既に今後のことは考えてある」
「残念だが、こうなった以上は別のところへ移り住む他あるまい」
「別のところ……ってアテはあるんですか」
「無論ある。そこへ向かうため、ここに皆を呼んだのだから」
俺も同じだ。
「ヒトがのさばる世界で、ネコがための地は限られておる。もし他にあるというのなら聞き入れよう」
実際、“ある一点”を除けば、『ネコの国』は今いる場所よりも優れた地だ。
腹が減ったら、目についた獲物をとることも可能だ。
「しかし、そこを新天地にするとして……果たして可能なんでしょうか?」
より良い場所であるが故に、あそこにいるネコたちは縄張り意識が非常に強い。
それでも入りたければ、強さにものを言わせて存在感を示すしかないだろう。
「だが、それができるのならば、我々は元からここにいません」
いや、仮にできたとしても、好んでやりたくはない。
それに、自分達のために他の住処を奪うことは、俺たちを追い出そうとするヒトたちと変わらない。
「分かっておる。だから、わしは少し前に『ネコの国』へ赴き、そこのヌシに話をしにいった」
「わしはこう見えても、あそこで偉い立場だったのだ。若い頃の話じゃがな」
「ええっ!?」
さらりと明かされた過去に、一同は飛び上がるほど驚愕している。
俺も毛が抜けるんじゃないかってくらい内心びっくりしていた。
「まあ、詳細は省くが、それから何やかんやあってな……お望みとあらば、聞かせてやろう~か?」
「いや……結構です」
またも歌って説明しようとするモーロックを、ダージンが粛々と静止する。
実のところ少しだけ気にはなるが、今はそれよりも『ネコの国』に行けるかどうかだ。
「それで? その“ヌシ”とやらと話はついたのか?」
「うむ……全員受け入れることを約束してくれた」
「おおっ! やったぁ!」
一部のネコは、予想外の結果に喜び勇んだ。
しかし、ケンジャやダージンたちのような、頭の回るネコたちの顔色は優れない。
「うむ……“認めさせろ”と言われた。わしらが『ネコの国』を治めれば、否が応でも納得するだろうと」
「それ……どういう意味?」
キンタは察しが付かないのか、それとも認めたくないのか、俺に恐る恐る尋ねてきた
「つまり……“戦って、勝て”ってことだ」
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