昔々、ある増田にかしこいエスカルゴとクソ雑魚ナメクジがあった。
クソ雑魚ナメクジには父親がいて、週あたり10ブクマも稼がない飲んだくれのろくでなしであったが、息子からは愛されていた。
クソ雑魚ナメクジの父親は、自分が不遇をかこっているのは詐欺師のエスカルゴのせいだ、とぼやいていた。
ある水曜日、クソ雑魚ナメクジの父親は場末のはてラボサービスで血まみれになって死んでいる。
物取りの形跡はない。
息子のクソ雑魚ナメクジは増田委員会に捜査を依頼するが、聞き入れられない。
葬式の日以来、クソ雑魚ナメクジはずっと汚れた喪服をまとい、徒歩であれ、臥輿であれ、かしこいエスカルゴの行くところをつけまわした。
かしこいエスカルゴが時事問題についての有益な意見記事を増田に投下すれば、クソ雑魚ナメクジは本アカで一番乗りの無言ブクマをつける。
かしこいエスカルゴは、影のようにつきまとうこのナメクジに耐えられなくなった。
ブクマカたちの前で、かしこいエスカルゴはクソ雑魚ナメクジに、どうせならお前のほうでも正式に訴えろと迫る。
――訴えられるときがきたら訴える。
そして、クソ雑魚ナメクジは相変わらず愚にもつかない質問記事を乱立させ、慈善家のブクマカたちからブクマをめぐんでもらい、ぼろぼろの服を着て、かしこいエスカルゴをつけまわした。
ある日、かしこいエスカルゴはハンドルを取得してブロガーとしての地位を手に入れようと画策する。
が、失敗に終わる。
彼の行くところ必ずそばにいる奇怪で陰気な同伴者を指差す。
かしこいエスカルゴはまたもや村民法廷へ申し立て、クソ雑魚ナメクジを侮辱で訴える。
――汚れた服を着たのは、喪のためだ。質問記事を乱立させたのは、みなの役に立ちたかったからだ。ブクマカたちに訴えなかったのは、恐れのためだ。
嫌みをさんざん述べ立てながら、クソ雑魚ナメクジはかしこいエスカルゴを訴えた。
記事を書くのを邪魔し、喪服を着用するのを禁じ、苦しんでいる人に解決を禁じ、黙っている人に沈黙を禁じたと。「クソ雑魚であることの許可さえ、かしこい人に求めなければならないのか? 野菜を毎日350g摂るのにも、その同意がいるのか?」
――なぜ、私を追ける?
――クソ雑魚のための増田と、かしこいもののための増田があるということか?
――おまえは喪服を着ている。泣いている。
――父が死んだ。破れた服を着ているのは、私の心が破れているからだ。
――おまえの父親が死んだと言うときに、なぜ私の記事にブクマをつける? 本文を読んでもいないのに?
――あとで読もうと思っているのだ。
――なぜ、私を追ける。夕暮れどきの増田ブクマカのように、あるいは互助会のように?
――はてなでもっとも蔑まれているブロガーですら、ブクマのコメント欄を閉鎖したりはしない。私の衣服を訴えるがいい。回答のつかない質問記事を訴えるがいい。この悲しみを訴えるがいい。書くのは勝手だ。ブクマをつけるのも勝手だ。