とおい未来。
全ての人類がローコストに、自らの肉体を性別や年令に関係なくデザインすることが可能となっている。
そうした技術の普及により、人類には「外見や身体的機能における平等を目指そう」という意識が芽生え始めた。
細い腕でも大きな力を出せる筋肉や、どんな肉体にも強靭に働く臓器。
白くても紫外線を通さない肌や、小さなサイズと高い思考力を両立した脳みそ。
やがて多くの国で、性別による絶対的な役割分担であった子作りすらも試験官での人工授精が主流となっていき、
「親と子」という上下関係すら忘れ、次第に多様な姿を持っていたことも忘れ、
去年死んだ美少女と同じ数の美少女が工場で生産され、施設で最低限の教育を受け、一人前の美少女として生活を始める
生まれ来る美少女たちは皆、障碍や精神疾患とは無縁で、知性が高く、人格者である。
美少女たちは働きもするが、殆どの美少女は一日の半分を無料で入学できる高等教育機関で教育を受ける。
無論教師も美少女であるが、教師志望の美少女が少なければAIが代行する。
美少女たちは服を選ぶように、髪の色や、眼の色、背丈や胸の大きさを自由に変える。
放っておけば成長や老化もするので、髪を切るように若い細胞に入れ替える。
昨日会った美少女が今日は別の美少女になって、見分けの付かないことも多いから、
美少女たちは生まれると同時に自分専用のコードを発行され、それで区別をつける。
それが生殖や社会的地位を越えた純粋な愛なのか、はるか昔の名残なのかは、未だに哲学美少女の頭を悩ませている。
そんな美少女たちは、怪我や病気になっても新たな肉体となるので、
即死してしまうような不幸な美少女をのぞけば、そういったことで死ぬことはないが、
改造を重ねた美少女たちは、パーツを取り替えるうちに「魂」とでもいうものが擦り減っていき、やがてふっとその生命の灯火を消すのである。