2012-03-21

家電業界不振ゲーム業界に落とす影

ここ最近決算で改めて浮き彫りにされつつある「家電業界不振」というものが、

ゲーム業界に影を落としてしまっているようです。


舞台となっているのは家電量販店です。

家電量販店にはほとんどといっていいほどゲーム売り場が設置されています

家電量販店ゲームを扱う意味とは何でしょうか?


それは、家電量販店が「家電の撒き餌」としてゲームが有効だったからです。


かつてはゲーム機テレビ接続して楽しむものが主流でした。

ゲームを買う顧客家電にとっても優良顧客である可能性が非常に高かったわけです。

なので、ゲーム専門の小売から見れば「どうやって利益を出しているんだ?」というような

値引き(実際にはポイント還元ですが)で客を集め、家電にも目を向けてもらう様にしていました。

利益の額でいえば、単価が高い家電のほう大きいためゲーム自体はさして売上を追い求める必要もないわけです。

大量に仕入れることで仕入れ単価は抑えることができますし。

その証拠に、ほとんどの家電量販店ではゲーム売り場に行くためには家電売り場を通らないと

行けないレイアウトになっています


ただ、その状況が2011年7月以降変わってきてしまいました。

地デジ移行とエコポイントの終了という、政府需要の先食い施策が相次いで終了を迎えたためです。

家電自体の需要が激減し、家電量販店決算はどこもひどい有様です。

そうすると、家電自体の売上が減っているわけですから、その撒き餌となっているゲームの仕入れも比例して

減らさなければなりません。

そして、今までは家電が売れるため多少ゲーム在庫を抱えても問題なしと判断されていたところが

抱える在庫の数も減らさなくてはならなくなります

最近の大型量販店で顕著なのが、今までいわゆる「ワゴン売り」というどう考えても赤字な値段で商品を捌く

販売方式が盛んになりつつある事と、ゲームの品切れが起こりやすくなっている事です。

今までは許容範囲内として抱えていた在庫であろう商品が廉価でレジ前に大量に積まれている光景が良く見られます

また、ゲーム自体も今までは発売日に品切れを起こすのは一部の人タイトルぐらいのものだったのが、

そうでないものも発売日に品切れを起こしている状況が少しずつ見られるようになって来ました。

ものによってはそもそも予約分しか入荷していないという状況も散見されます

ゲーム専門店ではだいぶ前から起こっていたことですが、とうとう家電量販店にまでそれが波及したことは

ある意味象徴的なことだと思います


本来こういう場合リスクヘッジの対象としてゲーム専門店がある筈でした。

しかし、今となってはゲーム専門店家電量販店の肩代わりを期待するのは無理です。

なぜなら、既に家電量販店が撒き餌としてゲーム安価でバラ撒いていた影響でゲーム専門店が閉店または

他業種(主にカードゲーム販売)との兼業になっている場合殆どであり、ゲームの仕入れに関しては

家電量販店よりも渋い状況に陥っているためです。

家電量販店ボリュームメリットによる仕入れ単価の低減とポイントサービスによる顧客の囲い込みによって

ゲーム専門店は対抗措置として新品販売の利益限界まで削らねばならず、その結果利幅が新品販売より大きい

中古販売に頼らざるを得ないという状況になりました。

初期の新品の需要が一段落すると中古で戻ってくる商品を中心に扱って利益を出していくスタイルゲーム専門店に定着し

新品の需要家電量販店のそれとは比較にならない規模でしょう。


とてつもなく大規模な家電需要が突発的に発生しない限り、今後数年この状況は続くでしょう。

それによりゲーム業界が受ける影響がどのようなものなのかは未知数です。

ただ、1つだけ確かなことは、今まで以上にゲームの販売が「ブランド物」に偏り、全く新しい新作ゲームは売れにくくなっていくだろうということです。

作り手も、売り手も、客も、苦しい時に当てにするのは「過去の実績」だからです。

客は「自分に合わないゲーム」を掴んで金をムダにすることを恐れて「ブランド物」のみに手を出すようになり、

売り手は売れ行きが未知数のゲームを不良在庫として抱えるリスクを恐れて完全新作の入荷を減らし、そのぶん「ブランド物」の入荷数を増やすでしょう。

作り手においても、経営層の判断として完全新作に大金をつぎ込むリスクは避けて、安定した売上が見込める「ブランド」に金をつぎ込むでしょう。


しかし、そうやって過去ブランドに縋りっぱなしだとそのブランドはどんどん疲弊していきます

客は同じブランドに頻繁に触れることにより新鮮味を失いますし、売り手や作り手にとっては

完全新作が作られにくくなるということは、新たな売れ筋ブランドが発生する可能性自体が減っているわけです。

たとえ景気が良くなったとしても、この状況は簡単には打破できないでしょう。

冷え込んだ需要を回復させるのには、冷え込むのに要した時間の何倍も必要となるからです。

一旦締まった財布の紐はそう簡単に解けません。


一介のゲーム好きとして完全新作に触れる機会が多く訪れる事を切に願います

作り手、売り手、買い手の全てを含めたゲーム業界に幸多かれ

記事への反応(ブックマークコメント)

ログイン ユーザー登録
ようこそ ゲスト さん