2022-11-28

あんまり知られてない特許の話

別に弁理士では無いんだが業務上特許をよく取り扱う

先日妻から特許でも取って一発当てたい!」みたいなことを言われたのでその流れで解説

特許を取ってもお金は貰えない

特許は単に「その発明あなたが独占的に使っていいですよ」という権利が貰えるだけなので、特許を取っただけではお金は貰えない

小説を書けば勝手著作権が発生するが、発明審査してもらって初めて特許権が得られる、というもの

お金が貰えないどころか特許権を維持するためにお金がかかる

よく「特許をいっぱいもっているんだからお金いっぱい貰えるでしょう?」というのは間違い

会社によっては奨励金が出たりするけど微々たるもの

特許侵害されても勝手お金は入ってこない

誰かが自分特許勝手に使っていたとしても申請すればすぐにお金が貰えるわけではない

侵害者に警告→和解交渉裁判所みたいな普通民事訴訟みたいになる

そして完璧侵害していることなんてほとんどなくて大体は争う形になる

時間もかかるしお金もかかるし勝っても大したことない場合も多い

特許を取っても個人利用されたら特許侵害にならない

有名な話だがコカコーラとかケンタッキーなんかは特許を取っていない

これは特許を取得するとその内容が公開されてしまうからで、ブラックボックスにしたければ特許を取らなくても良い

じゃぁなぜ公開したくないか、というといろんな仮説があるがその一つに「簡単に作れるから」というのがある

ネットで調べればKFCコカコーラ再現レシピがいっぱい出てくるように大量生産するものなので個人簡単材料を揃えられる可能性がある

仮に特許を取ったとしても個人利用している人には侵害請求できないのでレシピが公開されると単にみんなに作られるだけになる

論文投稿前に特許出願しなくてよい

特許が取得できる条件に「出願時点で公の知識ではない」というのがある

まり特許出願前にメディア等で発表したら特許が成立しない

この制約があるために学会等の論文投稿を渋る場合があったのだが、今は1年以内なら権利が発生することになっている

まり論文投稿から1年以内に出願すれば論文投稿時点から権利が発生する(登録されれば)

それより前に公開技術になっているとダメなので、要するにさっさと投稿して特許化はじっくり考えれば良い

出願と審査は別

特許は出願すると自動的にその内容が審査されるわけではなく

審査請求をすることで初めて審査が行われる

まりは「車輪作りました」という特許でもとりあえず出願はできるし、その内容は公開される

審査が通って初めて特許権が成立するのだが、当然ながら出願順を抜くことはできないので

から車輪作りました」という特許が来ても先に来た方が優先される

3年間放置すると却下されてしまうのだが、逆に言うと3年間は生きた状態にできる

審査請求すると数十万必要になるが出願だけなら2万ぐらいでできるので個人でも全然できる

3年やってもパッとしない技術は恐らくその先も無いので、出願だけしてビジネスやってみて無理なら放棄、というのも全然アリなんだが

割とみんな「審査しないといけないもの」という認識が強い

ちなみに全然審査されない特許があって他の企業ヤキモキしてる場合、他の企業がその特許審査請求することもできる

当然ながらお金審査請求した企業が払う

出願だけならノーリスクなので、なんか思い付いたらとりあえず出願する、というのもアリだと思う

特許登録一発成功は失敗

特許は広い範囲で取れることが重要で詳細に書けば書くほど回避策ができてしま

「丸いゴムタイヤで回る車輪」だと36角形だったりゴムじゃなかったりしたとき回避されるので「回転体」ぐらいで取れると良い

これがあるので特許取得を狙うとき最初に「無理かな?」ぐらいの広めの範囲請求する

審査請求すると途中結果で「こんな広いのはダメ特にここがダメ」って返ってくる(拒絶理由通知)ので

「じゃぁこれぐらいなら良いってことだよね?」っていう修正をして請求する

それでもダメときはあるけど、これでOKなら狙い通り

一発で登録出来た場合は「もっと広めを狙えば良かった」という失敗例になる

回避可能特許意味が無い

審査請求修正していく中で「これって登録できても回避されるんじゃない?」っていう状態になったらさっさとやめた方がいい

回避可能な形の特許なんて自己満足以外の何物でも無い上に

仮に回避技術の方がオープンになってしまうと結果的にはそっちの方がスタンダードになる場合も多い

逆に特許を取ってしまたことで変なしがらみが出来て技術変更出来ない場合も目にする

そのくせ維持費はかかるのでさっさと捨てた方が良い

特許事務所商売でやっている

この辺りを踏まえた上で特許事務所は「商売」としていろんな案を出してくる

意味の無い審査請求反論修正なんかを繰り返してその都度手数料を貰う商売である

彼らの意見は十分に参考になるけれど、あくま特許取得するかしないか判断は出願者が決めるべきなので、その辺を勘違いしない方が良い

  • 論文投稿前に特許出願しなくてよい 新規性喪失の例外規定の話をしてるのかな。 あれはあくまで「申請した公開行為については新規性・進歩性の判断では考慮しませんよ」という話で...

    • 横の横だけど俺もこの新規性喪失の例外の話は気になった。 一番ヤバいのが冒認出願されたとき。 相手は仕組みがわかってないから特許範囲の書き方を変えちゃって、でも実施例の実験...

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