新専門医制度、2017年度から動き始めるのか、延期されるのか、注目している。
新専門医制度で日本の内科医療は確実に崩壊すると思っているからだ。
今のローテーション2年から、まさかのローテーション5年という、びっくりな制度だもの。
しがない内科医だが、新専門医制度に反対する理由をここに書かせてほしい。
1. 内科医師の貴重な20代を、ローテーションに費やされる。
ローテーターというのははっきり言ってその科にとってはお客様だ。お客様は希望の科でないところではそんなに真面目に研修しないし、教えるほうもそんなに真剣には教えない。だって循環器内科が胃カメラをする必要はないもの。将来消化器内科にならない医師に、患者さんだって胃カメラはされたくないだろう(てか危険だよ)。そういう話だ。初期研修2年のローテートはある程度意味があると思っているが、新専門医のプラス3年は、正直時間をドブに捨てているようなものだ。
上に述べたように、ローテーターたちは病院にとって、専門としてはなんの戦力にもならない医師たちである。せいぜい当直を回すコマだ。そういう戦力にならない医師を雇うお金、そんなに病院は持っていない。特に大学病院のように人が多いところはなおさらである。
驚くべきことに、大学病院のローテーターたちは、「大学院に籍を置きながらローテートしていく」という制度をとるところが多いという。つまり、「大学病院からはお金は出ず、週に1-2回のバイトで食いつなぎながらなおかつ大学院の学費を払う」はめになるのだ。働くためにお金を収める制度をよしとする気がしれない。
そもそも5年のローテート終わった時点でストレートに行って29歳だ。5年やってぼやっとした内科の資格しかとれない。てか、あらゆる内科をローテートしてあらゆる内科をろくに見れない医師がわんさかできる訳だ。女医の場合、そろそろ妊娠出産したい時期だが、ここで妊娠出産したら、確実に復帰ができなくなる。なぜならなんの専門もないからだ。「資格なくても診れる」ならまだマシだが(そんな医師は多い)、専門的な指導を受けてないから何も診られない。そりゃあ女医は皮膚科・眼科に逃げますよ。マイナー科ももちろん資格取得・維持が難しいのだが、別に資格なくてもちゃんと診られればよいのだもの。
男性も、5年ローテートしてそろそろ家庭を・・・てそんな気になるだろうか?なれるとしたら相当楽観的な人々である。そもそも30代にもなってやっと専門て・・・人間年をとるに従って動けなくなるし、学習も出来なくなるのだ。バリバリに働けるのなんて、せいぜい40代まで・・・。そんな働ける貴重な3年をドブに捨てろといってるものなのだ、今回の新制度は。そりゃあ外科・マイナーにいって早く一人前になりたいはずだ。
指導医がまた大変である。業務を行いながらレポートの細やかな添削とか・・・どんだけパソコン作業させる気なのだ。しかも面接を月に一回だと?違う病院にローテーターがいる場合、交通費どうしてくれるのか。この大変な業務をタダでしろとか、一体なんなのか。単純に考えても研修医+ローテーター+後輩と、教える手間が1.5倍になるのだ。真面目な医師が何人か過労死するんじゃないかと心配している。
ちなみに新専門医制度はローテーターに専門外来も義務付けている。専門の内科って、一般に入院より外来の方が難しい。
将来全然違う科に行くペーペーの医師に専門外来させるのか?1日に数十人の外来を診る中、十分な指導ができるとも思えず、なんともはや・・・である。
6. 結論。新専門医制度で内科医は激減し、残った内科医は疲弊する。
でもって、みんな専門に行くのが遅くなるので大学院進学や留学は減るし、当然のことながら研究成果も上がらなくなるだろう。
という訳で、今回の新専門医制度、内科だけでもどうか延期してほしい。
追記(2016/3/29):なんで内科の話になるの?というコメントを頂いたが、外科系は今とあんまり変わらないなーという印象である。
また、改革の狙いがあるはずでは?というトラックバックも頂いたが、正直、改革の狙いがわからず、困惑している。
総合内科専門医を別に作るから内科各科の専門医を作ろうと聞いていたはずなのだが、実際には「あらゆる内科をしろー。専門もやれー」という内容になっている。
なんで内科の話になってるのか全然わからん
○○制度になると問題が起きますよ!と言いたいのは分かった。 でも、その○○制度を採用したがっている団体が居るわけだよね? 彼らの言い分に対しては何も反論していない。 問題...