2024-08-06

最適投資戦略

1. 確率動的計画法による最適投資戦略

連続時間モデルにおいて、最適投資戦略Hamilton-Jacobi-Bellman (HJB) 方程式を解くことで導出される。

投資家の効用関数を U(x) とし、リスク資産価格過程幾何ブラウン運動

dSₜ/Sₜ = μdt + σdW

で表す。ここで、Wₜ はウィナー過程である

このとき、最適な投資比率 π*(t,x) は以下の HJB 方程式を解くことで得られる:

0 = sup_π { U'(x)(rx + (μ-r)πx) + ½U''(x)σ²π²x² + V_t }

ここで、V(t,x) は価値関数、r は無リスク金利である

2. マルチンゲール法によるオプション価格評価

完備市場仮定し、リスク中立測度 Q のもとでのオプション価格を導出する。

ヨーロピアンコール・オプション価格 C(t,S) は以下で与えられる:

C(t,S) = e^(-r(T-t)) E_Q[(S_T - K)⁺ | F_t]

ここで、K は行使価格、T は満期、F_t は時刻 t までの情報集合である

Black-Scholes モデルの下では、この期待値は解析的に計算可能であり、以下の公式が得られる:

C(t,S) = SN(d₁) - Ke^(-r(T-t))N(d₂)

ここで、N(・) は標準正分布の累積分関数、d₁ と d₂ は所定の公式で与えられる。

3. 確率ボラティリティモデル派生証券価格付け

Heston モデルなどの確率ボラティリティモデルでは、ボラティリティ自体確率過程に従うと仮定する:

dSₜ/Sₜ = μdt + √vₜdW¹ₜ

dvₜ = κ(θ-vₜ)dt + ξ√vₜdW²ₜ

ここで、W¹ₜ と W²ₜ は相関 ρ を持つウィナー過程である

このモデルの下でのオプション価格は、特性関数法を用いて数値的に計算される。

4. 最適執行戦略市場インパクトモデル

大口注文の最適執行を考える。Almgren-Chriss モデルでは、以下の最適化問題を解く:

min_x E[C(x)] + λVar[C(x)]

ここで、C(x) は執行コスト、x は執行戦略、λ はリスク回避度である

市場インパクト線形仮定すると、最適執行戦略時間に関して指数関数的に減少する形となる。

5. 極値理論とテールリスク管理

極値理論を用いて、稀な事象リスク評価する。一般極値分布 (GEV) を用いて、最大損失の分布モデル化する:

F(x; μ, σ, ξ) = exp{-(1 + ξ((x-μ)/σ))^(-1/ξ)}

ここで、μ は位置パラメータ、σ はスケールパラメータ、ξ は形状パラメータである

これにより、通常の VaR や ES では捉えきれないテールリスク評価できる。

6. 確率制御理論と動的資産配分

確率制御理論を用いて、時間変動する市場環境下での最適資産配分を導出する。

状態変数 Xₜ の動学を

dXₜ = μ(Xₜ,αₜ)dt + σ(Xₜ,αₜ)dW

と表し、制御変数 αₜ に関する最適化問題を解く:

sup_α E[∫₀ᵀ f(Xₜ,αₜ)dt + g(X_T)]

ここで、f は瞬間的な報酬関数、g は終端時点での報酬関数である

この問題は、前述の HJB 方程式を解くことで解決される。

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