家にこもってリモートワークしている期間に、切実に彼氏が欲しいと思うようになった。
もともとあまり結婚願望があるほうではなかったが、この先、一生誰もいない家に帰るのだと思うと急に怖くなった。
自粛期間が明け、初出勤の日。
配属先は既婚者のおじさんばかりだったので、職場恋愛を諦めマッチングアプリに登録した。
彼は趣味やこれまでの経歴など共通点も多く、話していて心地の良い相手という印象だった。
苦手なメッセージのやりとりを彼とは長期間続けられたので、もしかしたら…とかなり期待していた。
しかし私はひとつ危惧していることがあった。それは私の顔面である。
正直私の顔はお世辞にもかわいいとは言えない。
顔写真は登録していたが、実物を見て無理だと思われる可能性はかなり高い。
一か月近くもやりとりをしたのに、この顔面のせいで一回で終わってしまうのはもったいないな…と思いつつ待ち合わせ場所に向かった。
通話もしたことがあったので、聞き覚えのある声にドキドキしながら振り返ると、イメージしていたのとは違う人間が立っていた。
その瞬間に思い出したが、彼の登録している写真は後ろ姿ばかりで正面の顔を見たことがなかった。
実際に会うまでは身バレ防止のためだろうかとその理由をあまり深く考えたことはなかったが、そういえばこういう可能性もあるなと冷静に考えていた。
私は他人の顔に対して、美しい、かわいいなどと思うことはあるものの、その逆の感情を抱くことはほとんどなかった。
過去に好きになった人たちもイケメンというわけではなかった。(友人に写真を見せるといつも微妙な顔をされていた)
相手を好きになると顔まで好きになってくるタイプなので、好みの顔も特になかった。
そんな私が、初対面で顔を見て無理だと思ってしまったのがかなりショックだった。
会う前まで想像していたのとまったく逆の立場になるとは思わなかった。
顔ではなく中身を見られる人間だと思い込んでいた自分が恥ずかしかった。
自分の顔を相手にどう思われても諦めがつくが、自分が他人に対してそんな風に思うのは受け入れられなかった。
これ以上自分の嫌いな面を見たくなくて、その日は彼の顔をほとんど見ないようにして過ごした。彼には本当に失礼なことをしてしまった。
今もやりとりは続いているが、正直もう会いたくないのでフェードアウトしようと思っている。
会う前に期待しすぎたのかもしれない。
普通に職場で出会っていたら、友人関係から恋愛関係に発展することもあったかもしれない。
しかし、マッチングアプリきっかけとなると、初対面から恋人候補として相手を見てしまう。
これまでの私は、他人を恋人候補として見たことがなかったのだと気が付いた。
だからこそ、中身を知ったうえで外見も含めて相手のことを好きになっていくような恋愛ができたのだろう。
彼には申し訳ないが、今回でいろいろ学ぶことができた。
今後は顔写真がない人とは会わないようにする。