意味のない意地を張ったとは思う。
だが張ったからには、自分の思い出に決着をつけなければいけなかった。
あの物置部屋に行って、ドラキュラがいるかどうか確かめなければ。
鬼が出るか蛇が出るか、いずれにしても怖気づいてはいられない。
たとえ不都合な真実が待っていたとしても、このまま家にノコノコ帰るわけにはいかなかった。
「……というわけで、ちょっと協力してくれ」
「にわかには信じがたいね。そもそも“ドラキュラ”はキャラクター名であって、吸血鬼全般を指す言葉ではないし」
ミミセンがどうでもいい薀蓄を垂れる。
ドラキュラが固有名詞かどうかなんて今は問題にしていないんだけれど。
「ま、マスダの兄ちゃんが言ってることの方が……す、筋は通ってる、かな」
たどたどしく喋っているのはドッペルだ。
いつもは割と乗っかってくれるのだが、説明するのに兄貴の名前を出したのが迂闊だった。
ドッペルは兄貴に懐いているから、意見が割れたらあっちに味方する。
「私、予定あんだけど、そんなことのために呼びつけたの?」
タオナケが溜め息交じりにボヤいた。
連絡の際に二つ返事で応じていたから、どうせ大した予定じゃないだろう。
それでも期待はずれな用事だったせいか、かなり不機嫌になっている。
そんな感じで、皆あまり協力的ではなかった。
ドラキュラの存在を疑っていたと同時に、内心恐れてもいたからだろう。
「そいつは強いのか?」
「つまり、そいつを倒せば俺は名実ともに最強の男になるわけだ」
けれど、ただ一人、仲間のシロクロはやる気に満ち溢れていた。
けれども、さすがに俺とシロクロだけじゃ不安だった。
万全を期すなら全員の力が必要だ。
「みんなは不安じゃないのか? この町にドラキュラがいるかもしれないのに。その可能性を、大人たちは可能性とすら考えない。でも俺たちは違う!」
多少の無理を承知で、俺は勢いに任せて皆を説得する。
「夜になると、ヤツは目を覚まして血を追い求める。蚊にさされる方がマシだってくらい吸われるんだ。それは俺たちかもしれないし、俺たちの家族かもしれない」
不安を煽りながら、これは必要なことで、自分たちにしかできないことだと熱弁した。
「私、ドラキュラなんて信じてないけど、まあ確認するだけならいいかもね」
その甲斐もあり、皆も腹も括ったようだ。
俺たちは阿吽の呼吸で頷くと、おもむろに保育園のある方角へ走り出した。
俺の通っていた保育園にはドラキュラがいる。 そのことを知らされたのは俺が保育園に来て数ヵ月後のことで、その日は何もかもが不自然だった。 保育士の先生は紙芝居の続きを読み...
≪ 前 まずは内部の情報を調べるため、卒園者の俺一人で訪問する。 突然の訪問だったが、知り合いの保育士がいたためスンナリと入ることできた。 「おー、マスダくん。また会えて...
いい加減つまらないので投稿をやめてくれませんか
≪ 前 ミミセンの作戦は、こうだ。 まず俺が保育園の内部を調べつつ、侵入経路を確保。 それぞれ配置についたらトイレで合流。 そこでドッペルが俺と入れ替わり、同伴の先生を陽...
≪ 前 「ちょっと待って」 事務室前に着くと、ミミセンはポケットから手鏡を取り出した。 それを使って、中の様子を間接的に覗き込むようだ。 「何でそんなもの持ってるんだ」 「...
≪ 前 扉を開くと、中からひんやりとした空気が溢れて俺の肌を掠めた。 「私、冷え性じゃないんだけど、何だか寒気がするわ」 どうやら、それを感じたのは自分だけじゃなかったら...
≪ 前 階段口から、恐る恐る二階への通路を眺める。 踊り場はないようで、10段ほどの短い階段が扉へまっすぐと続いていた。 厄介なのは、横幅が狭くて一人ずつしか上がれないこと...
≪ 前 地震とかで倒れてしまい、たまたま塞ぐような形になったとか? いや、それだけでこうなるとは考えにくい。 つまり意図的に塞がれていたってことだ。 そして、それが出来る...
もりあがってきましたね
≪ 前 俺はまずドラキュラめがけて水鉄砲を撃ち出した。 「や、やめっ……」 察しの通り、水鉄砲で撃ち出されたのは聖水だ。 主成分は水と塩で、ここに聖職者の祈りを込めること...
≪ 前 男は目を泳がせながら、たどたどしく説明を始めた。 「自分は、ここで働く、その、一人で」 俺たちの猛攻がよほど応えていたのか、紡ぐ言葉は途切れ途切れだ。 要約すると...
≪ 前 ………… 後に分かったことだけれど、男の正体はホームレスだったようだ。 日雇いの配達業で保育園に来た際、物置部屋に入ったことが最初らしい。 その時は、荷物を置いた...