俺たちはフラッガーを拘束して、次元警察に引き渡すまで船で待機することになった。
「ふふふ……己(おれ)も年貢の納め時が来たというわけか」
信者達が俺たちを捕まえようとしたとき、「神妙にお縄を頂戴しろ」とか言っていたのがフラッガーだ。
独特な言葉選びをする奴だとは思っていたが、こいつがフラッガーだったとは。
いや、そういえばガイドも「そうは問屋が卸さない」だの宣ってたな。
「ああ……次元が元に戻っていくのが分かる」
スタングレネードの後遺症なのか、フラッガーは意識が混濁しているようだった。
先ほどから虚空に向けて喋り続け、リアルでツイッターみたいなことをやっている。
或いは、あの状態で俺たちに話しかけているつもりなのかもしれない。
「せっかく……せっかくフラグを立てたのに」
そして聞いてもいないのに、フラッガーは身の上話を始めた。
次元警察に引き渡されるまでの間、フラッガーは長々と自身の思惑を語り続けた。
だが、どうでもいい他人の自分語りを親身に聞いてやれるほど、俺は真面目じゃあない。
なので、ここの件は要約させてもらおう。
「己(おれ)は“誰もが幸せな世界”を作りたかっただけなんだ……」
昔のフラッガーは、世界の全てを幸せにしたいと願う、善良な若者だった。
そのために彼はエンジニアとして努力し、その過程で様々なものを発明していったという。
しかし頑張れば頑張るほど、その願いには限界があることを彼は思い知らされた。
「無駄だった……いや、無駄であることを知れたという点では、無駄ではなかったかもしれないが」
なぜなら、幸せの形は人の数だけ存在するのに、人々は同じ世界で共存しなければならないからだ。
例えば人物Aの幸せが、人物Bの幸せと相反する場合、どちらかは妥協する必要がある。
彼らどちらかの幸せが、その世界のルールにそぐわないってこともあるだろう。
「己(おれ)の世界において、幸せとは妥協の連続だ。多くの人間は我慢して、たまたま世界のルールに適合できた者が幸せを謳歌する。そういう幸せの譲り合いを“優しい世界”と奴らは呼んでいたが、“ぬるま湯”がいいところだ」
そんな時、彼の元に舞い降りたのが“フラグ”という次元干渉システムだった。
≪ 前 「なあ、今すぐじゃないとダメなのか? また次回にでも……」 「頼むよ。こんなチャンス、二度とこないかもしれない」 ガイドたちは、今までフラッガーの犯行に悪戦苦闘し...
≪ 前 「フラッガー?」 「宇宙規模で有名な指名手配犯さ。SSS+級のね」 「そいつは激レアだな」 そのフラッガーとやらは様々な世界を行き来して、幾度も次元を分裂させているらし...
≪ 前 ・ ・・ ・・・ ・・・・ 「ほら! 起きて! しっかり!」 朧げだが、既視感のある声が聴こえる。 俺はゆっくりと瞼を開いた。 「あ、やっと起きた。あの後キミはぐったり...
≪ 前 「なんで俺が?」 「キミじゃなきゃ次元に直接干渉できないからだよ。厳密には“普遍的存在”じゃなきゃ、だけど」 さも当然のように、また固有名詞を出してきた。 いや確...
≪ 前 レーダーを頼りに信者達の目を掻い潜り、俺たちは慎重に歩を進めていく。 不幸中の幸いというべきか、道中は信者たちの手が及んでいない場所が多く、労せず次元の歪みに辿り...
≪ 前 信者たちは難なく撒くことができた。 彼らのダボダボな白装束は、人を追いかけるのには適していないからな。 こういう時ですら、なりふり構う必要があるんだから信者は大変...
≪ 前 もしかしたら、この世界では普通のことなのだろうか。 価値観が矯正されているから、彼らにとっては問題ではないのかもしれない。 集金が阿漕だとしても、それが“救い”へ...
≪ 前 生活教は“生活をより良くする”という教義のもと、日々ライフハック的なことを広めている。 この辺りを中心に活動しており、地域新聞に載る程度には有名な新興宗教だ。 し...
≪ 前 その地に足を踏み入れた瞬間、すぐに異様な空気感が襲った。 場所は先ほどいた庭と同じ。 目に映る景色も代わり映えしない。 だが「何かが違う」という感覚。 リメイク、リ...
≪ 前 「さっきの続きだが、“本来なら存在しなかった世界”って何だ?」 「分岐によって自然発生的に生まれた世界ではなく、次元の過干渉により発生した世界。システムの不具合、...
何度も言うけどさ 本当につまらないんだよ だからさ もういい加減やめたほうがいいって どうしてそんなに頑固になるの こうやって言ってることを素直に受け止めて
ごめん やっぱり面白くないよ 本当に何度もいうんだけれどさ 才能もないし諦めたほうがいい もう投稿しないほうがいいよ
ちゃんとトラバ読んでる? つまらないからもうあきらめようよって 何回も書き込んでいるよう 誰も求めていないことだし 本当にもうやめようよ
≪ 前 「これは使命だと思った。全ての人間、いや森羅万象を幸福にせよという己(おれ)の使命だと」 彼はそのフラグで、悪魔的なヒラメキを得たのである。 それが世界を分裂させ...