だが自分が物心ついた時はまだ私的録音メディアはカセットだったし、トイレもぼっとん便所がまだまだ残っているところには残っていたし、ダイヤルを指で回すタイプの公衆電話だってよく見た。電車は流石にすぐ自動改札に化けた気がするが本当に小さな頃に数度駅員さんに切符をカチカチしてもらった記憶があるし、バスカードなる謎の磁気カードを通してバスに乗ったこともあった。どこぞで参加した抽選会の目玉商品はポケベル(のような何か)だった。
一応世間的にはぎりぎりまだ若年世代と括れなくもない自分の子供時代ですらまだそんなものだったのだと思い返すと、本当にこの30年で何か起こったのかという気になる。手元のスマホでぼんやりYoutubeの動画を眺めているとき、ふとそういやこのスマホだって自分の中学時代にはまだ影も形も無かったんだよな……iPodはあったけど……と気が付いて愕然とする。
仕事でも当然のように離れた場所にいる相手に今日中に対応してくれーみたいな連絡をメール(同じオフィス内にいる場合はチャットツール)で送りつけたりしているけど、自分の親が若いころバリバリでやっていた時代は最速でも固定電話かファックスで連絡取り合ってみたいな世界だったのかと思うと、逆に想像するのが難しいというか。
一世代経たないうちにこれなんだから、(古代エジプトの頃からあるとはいえ)世代による価値観の対立も先鋭化していくのは仕方ないかもしれない。既に自分も00年代以降に生まれた世代とは価値観から何から全然違うんだろうなという予感はある。