2018-07-29

この話はフィクションです。実在人物団体とは関係がありません

弁護士は、頭を抱えていた。何か厄介な出来事に巻き込まれているのではないか

その弁護士は、とあるテーマパーク顧問弁護士をしていた。そのテーマパーク労災が起こった。着ぐるみ中の人怪我をしたというのだ。それ自体は、特に何もおかしなことではない。けれど、テーマパーク幹部は言う。

「あれは着ぐるみではないので、中の人なんていないんですがねぇ……」

「今はそういう話をするときじゃないでしょう。企業イメージが傷つかないようには、できるだけ配慮します」と先生は答える。

「それが先生、本当に着ぐるみじゃないんです。確かに一部は着ぐるみキャラを出演させているのは事実です。しかし、今回の災害被災者が入っていた、と主張しているキャラについては、着ぐるみではないんです」

現場確認しまたか? もしかしたら、最近着ぐるみも導入されたのかもしれませんし、被災者はあまりキャラクターに詳しくなかったのかもしれません。勤怠の記録、何をしていたか聞き取りなどが必要です。直属の上司が嘘をついている可能性も考えて、いっしょに働いている人を一人ずつ呼んで話を伺うべきです」

「既にそれはやっています。けれど、上司も同僚も、被災者のことはキャストとして認識しているが、何をしていたかは思い出せない。そして、そのキャラクターについては着ぐるみ存在せず、よって、その着ぐるみ担当存在しない。残っている記録も調べましたが、確かに出勤はしているものの、何らかの着ぐるみに入っている可能性が高く、何の着ぐるみかははっきりしない。そして、ここ数ヶ月の他のキャスト仕事についても調べたら、すべての着ぐるみについて、いつ誰が着ているのかはっきりしました。他の着ぐるみに入っている可能性は考えにくく、存在しないはずの着ぐるみを着ているとしか考えられない」

存在しないはずの着ぐるみ存在しないことも確認したのですよね?」

「もちろんです。帳簿も確認しましたし、聞き取りしましたし、現物確認しました。存在しないことの証明不可能ですが、あるとは考えにくいです」

仕事をサボっていた可能性は?」

被災者着ぐるみ業務をしていることは、何人ものキャストから目撃証言があり、そういった可能性は考えにくいです。けれど、何の着ぐるみに入っていたかについては誰も覚えておらず、問題となっている着ぐるみについては、決してそれはない、と全員が答えています

「……よく分からないですが。仕事をサボっていた証拠を掴むか、そういう着ぐるみがあって、その業務についていて、そこで被災した、という話で進めるかどちらかしかないように思います。『その着ぐるみ存在しない。何の着ぐるみに入っていたのか把握していない』ではあまりにも心証が悪い」


その奇妙な事件からしばらくして。顧問弁護士をしている、別の団体から労災の連絡があった。


「xx動物園 法務部です。飼育員が労災に遭ったんですが。それが、パンダ着ぐるみを着て笹を食べていたら、笹が倒れてきて腕が骨折したとのことで……」

パンダ着ぐるみなんて、そんなのあるんですか?」

「そこなんですよ、先生。そんなものあるわけないでしょう…… ましてや、パンダの檻の中で着ぐるみが笹を食べるなんて有り得ませんよ……」

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