私はデリヘル嬢だ。
運ばれていったラブホテルや自宅などで、男性を相手にヘルスプレイをしてお金をいただいている。
けれど同時に、レズビアンでもある。
今は恋人と呼べるような存在はいないが、女性とお付き合いをしたこともある。
デリヘル嬢であるということと、レズビアンであるということが結びつかない方もいるかもしれない。
しかしながら、男性に性欲や恋愛感情がわかなくとも、ヘルスプレイをしたり好感を抱いている振りをすることは可能だ。
レズビアンのデリヘル嬢であるところの私は、ある日女性向けのデリヘルというものを知った。
女性のところへ女性が派遣されるタイプのデリバリーヘルスで、いわゆるレズ風俗である。
もちろん、レズビアン向けというわけではなく、ヘテロやバイの女性であっても問題なく利用できる。
ただ、女性のところへ女性が派遣される、と言っても、お店のタイプはいろいろあるらしい。
まずは、男性向けのデリバリーヘルスだが、女の子によっては女性のところへも派遣できますよ、というお店。
次に、女性専用をうたったデリバリーヘルスだが、受け付けの違う男性向けデリバリーヘルスも同時に存在し、在籍している女の子は男性のところへも女性のところへも派遣されるお店。
最後に、女性専用のデリバリーヘルスで、在籍している女の子は女性のところにしか派遣されないお店。
今回私が利用したのは、最後に挙げた女性のところにしか派遣されない、ということになっているお店だ。
ちなみに、このような女性向けの風俗店には、いわゆるヘルスプレイをしない、外で遊ぶだけのデートコースが存在する。
私はエスコートをする自信がなく、二人きりでくっついたりいちゃいちゃしたりしたかったため、ヘルスプレイのできるコースを選び、時間少し前にホテルへ入室した。
さて、男性が自分を買うのに使う金額とほぼ同額を支払ったわたしは、イクこともイカせることもなく時間を終えた。
女の子が下手だったわけではない。むしろ、私は胸に触れられながら、いつになく濡れていた。
けれど、自分の女性器に触れられるのに、どうしても抵抗を覚えたのだ。
おそらくそれは、自分がデリヘル嬢であるということへの後ろめたさでもあり、出会ったばかりの女の子に身体を預けきれなかったことでもある。
ただ、行為を中断してもらい、裸で抱き合っていた時間のほうが、はるかに充足感のあるものだった。
デリヘル嬢である私は、仕事中、お客様と裸で抱き合い、なにもしないまま時間を過ごすことがしばしばある。
女の子とそうやって過ごすのは、仕事中のそれと似ているようで、まったく違う時間だった。
女の子の背中は柔らかく、しっとりしていた。顔をあげるときれいな瞳がこちらを見ていた。ゆっくり背中に触れる手があたたかく感じた。時折交わすキスは穏やかで優しかった。
お客様の頭を胸に抱いて撫でると喜ばれることが多いのは、こういうことなんだろうと思う。
女の子の身体に私も少し触れさせてもらったが、性感を煽るようなものにはまるでならず、おっかなびっくりという表現が正しいものだった。
おそらく、いわゆるヘルスプレイができるようになるには、もう何段階かハードルを越える必要があるだろう。