結論:もっと音に拘れば全然評価が変わったのにとても残念だった。原作の宣伝になった事だけは良かったかな。アニメ化された時点でラッキーだから割り切らないと駄目なんだろうか。ここから大逆転の可能性も残っているので期待はしておく。
ナナマルサンバツのテーマは『早押しクイズ』である。早押しクイズにおいては『音』が重要になる。作中でも最初のクイズ大会においてヒロインが髪をかきあげて耳をすます所で作品の空気が急激に変わる。問題をよく聞いて出題意図を読み、聞きながらパターンを予測し、正解が十分に絞られるポイントを前もって予想し、その決定打が耳に入ると同時にボタンを押し込む。それこそが早押しの楽しさであり、クイズがただの物知りテストで終わらない部分なのである。そして、この作品はそれを描くことによりクイズの楽しさを受け手に伝え、クイズを楽しむ主人公に共感することで受けては作品を楽しむ。ナナマルサンバツという作品はそういう仕組みになっている。
つまり、ナナマルサンバツの面白さを描くのに『音』はとても重要な意味を持つのだ。原作の漫画ではそれをコマ割りや文字の大きさによって何とか描いてきた。たとえば、漫画のとあるコマに一つだけある吹き出しに多数の文字が詰め込まれているページと、逆に数文字しか文字が入ってないページがあったとする。読み手の体感時間はどうなるだろうか?1つのコマに大量の文字が入っているページはまるで時間がゆっくりと流れすぎて止まってすらいるように感じ、わずかな文字しかないページを読む時は素早い時間の流れを感じるだろう。それによって、なかなか問題の答えを誰も言わない時のピリピリとしていて長く感じる時間の感覚、素早く答えを言い当てられた瞬間の驚きを伴ったスピード感を演出しているのだ。
逆に、アニメはそういった『コマの作りを利用した体感時間の調整』は出来ない。直接『音』によって描写するしかない。原作が絵によって伝えている音のイメージを咀嚼し、その上で音作りをしなければ原作の描いていた物が死んでしまうのである。反対に、それらを上手く描くことが出来れば、原作以上の強烈なインパクトを持ってクイズの面白さを伝えることが出来ただろう。
そして、今の所ナナマルサンバツのアニメは……音に対する拘りがあるとは言えない……。致命的におかしいのはヒロインの声だけであるのだが、それ以外の要素も特別良くできているとは言い難い。それでは駄目なのだ。このアニメ化では『音』がよく出来ていると言えないのなら、それはとても勿体無い。せっかくのアニメ化なのだから拘って欲しかった。とはいえ時間はまだある。アニメでは切りよく麻ヶ丘例会までをやるのだろう。これから先も盛り上がるポイントはいくらでもある。頑張って欲しいものだ。