2017-05-24

テトリス

小6の時、親が離婚して母子家庭になった。父親とはその前からずっと別居していたから、家庭内に際立った変化は感じなかったけれど、苗字が変わったのがきつかった。同級生から好奇の目を向けられるのがとにかく嫌で、一時期、友達と遊ばなくなった。授業が終わると逃げるように家に帰った。

それで何をしていたかというと、部屋でずっとテトリスをしていた。布団に寝そべり、枕を高くして、毎日、何時間も。

そうこうするうちに、いつのまにか新しい苗字に馴れていた。同級生も僕の苗字ことなんて大して気にしてないことがわかった。僕はまたみんなと遊び始めた。

大学受験に失敗して浪人が決まった時も、ずっとテトリスをやってた。朝から晩まで一日中やってた。起き上がる気力もわかなかった。2週間ぐらいそうして過ごした。そのあとゆっくり受験勉強を再開して、徐々にペースを上げ、翌年にどうにか志望校合格することができた。

大学2年の時には手痛い失恋をした。サークルの仲間に彼女を取られたのだ。無理もなかった。そいつの方がかっこよくてスマートでやさしくて羽振りもよくて、ようするに僕の完敗だった。

その年の夏休みはずっと家でテトリスをしていた。サークルにも参加せず、海にも行かず、毎日部屋に篭っていた。その間にどうにか気持ちを立て直し、後期からまたサークルにも参加するようになった。冬には別の彼女ができた。

昨年、会社を辞めた。一族経営の小さな会社だった。社長引退し、息子が2代目に就任したのだが、僕はこの男と何から何まで合わなかった。営業方針労務管理、様々な面でぶつかった。それは意見の相違で済むものではなかった。結局は従えない僕が辞めるしかなかった。

僕はしばらくのあいだ放心状態になり、ずっと家でテトリスをしていた。昼夜逆転生活で、今が何時なのかもわからない。髭も伸び放題。そんな日々がしばらく続いた。僕はテトリスをやりながら思っていた。然るべき時が来たら、僕はまた自然と動き出すだろう。今までだってそうしてきたんだ。布団に寝そべり、テトリスをやりながら独りで年を越し、正月明けから転職活動を始めた。

から新しい会社で働いている。今は毎日が新鮮で楽しい

ピンチの時、僕はいつもテトリスに助けられてきた。家族でも友達でも恋人でもなく、テトリス

暗闇で何時間テトリスと会話する。一緒に傷の回復を待ち、力を蓄え、また外に出てゆく。

ありがとうテトリス

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