現在公開している大長編ドラえもん映画「のび太の南極カチコチ大冒険」を見てきた。
ディザーポスター・チラシの感じからかなり期待感をそそられるものであり、南極という場所からH.Pラヴクラフト著の「狂気の山脈にて」が想像させられた。
ここのところ年甲斐もなくクトゥルフ神話に興味を持っている自分は、この時点でかなり期待をしており、あまり見ることのなくなったドラえもん映画を久しぶりに劇場へ見に行った。
この映画は確かにクトゥルフ神話を彷彿とさせた。クトゥルフっぽい敵、南極、捜索のシーン、旧支配者の存在まで出てくるし、ニャルラトホテプと解釈できるキャラクターも出てくる。
特に私が気になったのは、若干ネタバレになるが、ゲストキャラのセリフである。この話、はのび太が「かき氷を無限に食べたい」という無理難題をいうところから始まるのだが、今回のゲストキャラはかき氷という文化がない世界の人であり、そもそも氷をメインで食べるということをしないため、かき氷の話を興味深く聞くのだが、それに対する反応として「あなた達なんでも食べるのね」という反応を返すシーンである。
クトゥルフ神話が日本であまり怖がらない(普及しなかった)説の一つとして、ラヴクラフトが海産物が嫌いだったところから着想されたクトゥルフは、海・深海にいる生物は得体の知れない怖いものであるという認識から来る恐ろしさも面をもっているとされており、日本は生で海産物を食べる習慣があるからというものがある。このセリフはこのメタファーなのではないかと考えられるのである。
ただ今回のドラえもんはクトゥルフ的な映画だったよ、だけではなくこの映画は、オリジナルのドラえもん映画としてもかなり良かった。過去の大長編のオマージュをくどくないぐらいに入っているし、音楽もとても良いものであった。またメインの5人の誰かが喋るときに不自然に止まっているわけでない振る舞いや、特に最後のシーンの綺麗さは、自分好みであるという点で、とても良かった。アドベンチャーの部分はハラハラさせ、またわかりやすく伏線を回収していく気持ちよさも良かった。
クトゥルフありきで見に行ったが、ドラえもんのオリジナル大長編として名に恥じない名作だった。かなりおすすめなので、できたら映画館で無理ならレンタルや特番でも見てほしい。