紀州犬射殺に関する上記のような批判を聞いて、ウン十年前の出来事を思い出した。
わたしの小さい頃、日本犬混じりの雑種を昔おばあちゃん家の庭で飼っていた。
ずいぶん前に亡くなったひいじいさんが何処から貰ってきたらしいけど、
きちんとした躾のされないまま大きくなった犬は、家に来た時からお手もおすわりもできなかったらしい。
女所帯だったおばあちゃん達には手の負えないワガママボーイとなっていた。
(まあ「犬=家族」の認識が全国に普及して、躾が義務教育レベルに達したのも、ここ20年くらいのものかと思う。
祖母宅は田舎だったこともあるせいか中途半端なオツムの犬がまだまだ多かった)
ある日、何かで興奮した犬に妹が噛まれた。
妹の叫び声が庭から響き、慌てて縁側に出ると、犬が妹に襲いかかっていた。
リードを引っ張っても、スリッパで顔を叩いても、びくともせずに妹に向かっていく犬。
犬の吠え立てる声と、泣き叫ぶ妹の声で私は縁側に立ち尽くしていた。
犬はどうにか引きはがされ、叔父にバチバチにシバかれておとなしくなったが、その日から私はその犬に近づけなくなった。
いまはもうほとんど目立たないけど、妹は顔に咬み傷が残った。
犬はガチ切れすると冗談抜きに手が付けられない。下手すりゃこっちが死ぬ。
愛玩用のチワワやトイプードルなんかですら、興奮するとめちゃめちゃ恐いし動きも速い。
ましてや日本犬はハンター気質。紀州犬は単独で巨大なイノシシを追いつめるほど獰猛だと聞く。
しかも射殺されたのは、体長120cmで21キロだったというじゃないか。
そんなの丸腰で押さえつけようもんなら速攻で首噛まれてお陀仏確定だわ。
さらに言えば時間は深夜帯。人には見えず、犬には見えるという無理ゲーステージ。
よく発砲の判断を下したし、よく13発で止めたと思うよ。
くだんのニュースで、タイトルのような批判が相次いでいるが、頭のなかお花畑すぎて震える。
「撃つより抱きかかえた方が早かっただろ」とか「取り押さえて保護しろよ」とか、
ナイフで刺し殺しにかかってる殺人鬼を、「かわいいんだから優しく抱きしめて許せ」とか、
「イケメンなんだからキスして耳元で愛を囁け」って言ってるくらいにはヤバいと思う。
確かに多くの犬を飼う家庭にとって、犬はかけがえのない家族だし、生き物を大切に思う気持ちはよくわかる。
わたしも妹も幸いにして犬そのものを嫌いになることはなかった。ワンコまじかわいい。
最近は野良犬もいなけりゃ、飼い犬もしつけがされてる場合が多いから、その実感がわかないんだろうけどさ。
もちろん、人に怪我させるなんか殺されて当然!なんて言うつもりはない。
射殺された犬は不憫でならない。躾をきちんとしなかった飼い主に、全ての元凶はあるのだから。
犬に対しての認識が甘い気がするね。これが狼とか熊なら誰も文句言わない。そういう犬の怖さが伝わってないんじゃないかな