ギリシャ人は怠け者で働かないから財政が破綻したとか、年金が手厚すぎて破綻したという(不正確な)俗説には
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などもそうであろう。
では、怠け者だとか年金が問題でなかったのだとしたらどうしてギリシャの財政はここまで悪化したのだろうか。
この原因は、ITバブルの崩壊に求められる。ドイツなど米国への輸出が多かった国はITバブルの崩壊の影響を
大きく受けた。そのためユーロの中央銀行であるECBは政策金利を下げていくことになったが、このとき、
米国への輸出に頼っていたわけではないスペインやギリシャの景気はさほど悪くなっていなかった。しかし、
ユーロ圏の政策金利はドイツもギリシャも一律なので、ギリシャの金利も下がっていくことになる。
このことは、ギリシャ国民は預金をしていて得られる金利収入が減ることを意味する。そして重要なのは、
ギリシャは景気が悪くなかったので、企業活動が活性化してさらに生産や所得が増えるという効果が無いなかで
このような事態になったということである。すると、ギリシャ国民としてはそれまでと同じペースでの消費
を続けた場合、金利収入が減る分だけ生涯を通じた消費からの効用・満足度が減ってしまうことになる。
そのため、仕方なしに、魅力の下がった預金をやめて現在にお金を使うことにした。具体的にはドイツなど
からの輸入を増やした。これすなわち経常赤字の増加であり、ギリシャの対外借金の増加である。
(なお、これは米国への輸出が減っていたドイツにとって渡りに船になっている。)
このときの借金が、リーマンショックによる疑心暗鬼の拡大で一気に市場の注目の的になってしまったのが
欧州債務危機であり、一度注目の的になってしまうとそれによる金利上昇で経済活動の縮小と債務の雪だるま式拡大
が起きてしまう。一度こうなると、市場の不安を鎮めない限りどうしようもないが、ギリシャの中央銀行ではなく
ユーロの中央銀行であるECBには限界があること、ユーロの政治家はしょせんはそれぞれの国の代表者であり
積極的に財政的に助けることはできないこと、という制約によって不安を鎮めることはできなかった。
そして今に至るのである。
つまり、ITバブルの余波で景気が悪化したユーロ主要国を助けるためにECBが政策金利を引き下げたことが、
当時は景気が悪くなかったギリシャの国民に消費・輸入を拡大するよう追い込んだのであり、そのときの
経常赤字こそが対外借金なのである。ドイツはそのときの政策金利引き下げの恩恵を大きく受けて息を吹き返した。
ギリシャはもし政策金利が下がっていなかった場合よりも生涯を通じた満足度が下がることを受け入れさせられ、