あまり顔はよくない。だから、少なくとも性格を見てもらえる時間の多い大学時代が勝負だと思った。
女の子をデートに誘って断られたり、告白して断られたり、そういうことを繰り返してきた。
いわゆるマニュアル本も読んでみた。二村ヒトシのエッセイ集とか・・・。
初めは、まあ今までももてなかったし仕方がないと立ち直ることができていた。
しかし、そうやって断られることを何度も何度も繰り返していくうちに、精神が変調をきたしてきた。
今まで楽しいと思っていた趣味が楽しくない。自分の好きだった人を奪った人間の顔が浮かんでくる。
朝、起きることができない。夜眠れない。
「好きだった女の子に振られることを繰り返して、うつ気味の症状になりました」
失笑された。自分は親身になって聞いてくれるものと思っていたので、心底がっかりした。
軽めの向精神薬の処方を出されて、その場は終わった。
たぶん、自分がここから救われるためには、何としてでも彼女を作らなければならないと思う。
今では、休日にベッドから起き上がる気力すらなくなってしまった。
学校も、頻繁に授業を欠席するようになった。
自分がイケメンだったら、女の子に話しかけたりするのも向こうから喜ばれる事になるのだと思うが、
残念ながら顔があまりよくない。自覚している故、顔以外の部分に価値があることを示すため、財力や知識量を誇示しようとしてしまう。
優位性を少しでも提示できなければ、自分なんて全く価値がないから。
そう思って誇示した結果、どんどんと人が離れていった。
これが間違ったアプローチと言うのは簡単だ。しかし、ならばどうやって差別化するといいのか。
それがなければ、顔が良くない場合「単なる優しい人」にしかならない。
恐らく、社会に出たらもっと世間は厳しくて、一瞬で合否の判定がなされるのだろう。
少なくとも長い時間で見てもらえる大学時代に彼女ができなかった事実は、