記名で書くのは恥ずかしい、自分勝手なファン心理なのでここにこっそり置いておく。
自分が憧れていた同性(ここではヒーローと呼ぶ)が結婚したりすると少し寂しい気分になる。これは憧れの異性、つまり自分のアイドルが結婚した時に感じる悶々とした気持ちとは少し違う。
自分は、30歳を軽く過ぎても独身のままで、学生時代と同じように、いや、よりマニアックに自分の文化系趣味に没頭して楽しそうにやっている人に憧れる。彼らは高尚な人間だが、社会からは少しだけはみ出し者だ。そんな異端な人間が、尾崎豊のようにぶざまに吠えることなく、社会と自分の折り合いをうまくつけてやっているところがカッコいい。つまり自分は単純ばかなロックスターが嫌いだ。もっと複雑な心を持っているのに、マトモな職について日中は真人間のように働いている人はたくさんいる。それなのに簡単にドロップアウトしやがって。
まあそんなことは置いといて、自分はヒーローのそんな生き下手そうなところが好きだ。経済的に余裕があり、社会的な地位もある、それなのにどうしても臭ってしまう体臭のような生き下手さが好きなのだ。この臭いがしない人はどんなに良い人でも信頼できない。心の底で疑ってしまう。
そして、ヒーローには近づきたくはない。幻滅するのが嫌だからではない。少しでも馴れ合ったら崩れてしまう繊細な感情があるのだ。
だから影ながら応援していた。素知らぬふりをして、心の中で「もっとやってくれ。もっとやってくれ!」と思っていた。
そんな人が結婚した。お相手はなかなかの美人だが、家庭的な雰囲気のある女性だった。亭主の趣味にも寛大で、足りないところを補うしっかり者という印象だ。それを聞いてビックリした。あんなに自分のために時間を使っていた人が結婚するなんて、と思った。ただ矛盾するようだが前からヒーローは非モテであってはならないとも思っていた。女性にモテないことからくる負のエネルギーを趣味に活かすタイプの人が苦手だからだ。そのタイプの人間は年をとって性欲が減退するに連れてセンスも減退してしまう。なので、モテてもモテなくても変わらずに趣味に没頭できる人が良い。
ああでも結婚するなんて。わかっている、結婚したから丸くなるわけではないだろうし、結婚しても趣味を謳歌する人はたくさんいる。だけどそれを奥さんが「うちの夫はいつまでたっても子供で~」みたいに笑顔で惚気でもしたら?耐えられない。そんなの耐えられないよ。この感じに似たものを経験したことがある。学生の頃、女の子と夢見心地でデートした後、実家に帰宅した時に感じるイヤな生活感だ。「遅かったじゃないどこ行ってたの?ご飯早く食べてね」の感じだ。それまで視界の上の先にぼんやり見えていた美しい願いが、何十年も続く古びた生活の重みによって地に落ちて割れてしまう、あの感じだ。つまり悲しいのだ。やるせないのだ。
そろそろ認めないと。赤の他人に自分の理想を押し付けても仕方ないのはわかっている。ただそれに時間がかかってしまっただけだ。これで最後にしよう。祝福しよう。心の中で、こっそりと祝福しよう。自分なりの愛を込めてこんなふうに祝福しよう。
「ああ生き下手な僕のヒーローよ、おめでとう。そして永遠に生き下手なれ。」
さて、今週末はどのidをご飯に誘おうかな?