地震が起こったとき、多数の人がそうであったように僕も寝ていた。
何かワケの分からない叫び声を上げながら目を覚ましたのを記憶している。
再び目を覚ましたとき、頭から10cm横に、25インチのトリニトロンテレビが落ちていた。
今でも思い出すと背筋が凍る。
確かその日はとても寒いが快晴で、生活圏だった大阪からも、西の空が燃えている事が分かった。
別に悪い事してたわけじゃない、震災でニーズが生まれただけの事だけど、当時いた会社の社長が嬉しそうに震災を喜んで語っていたのには流石に腹が立った。
その前年暮れ頃まで付き合っていた彼女がいた。
当時僕は29歳。
もちろん高校生だ。
可愛いし、ほんとにべたべたいちゃいちゃ、ところ構わずキスばっかりしてたように記憶する。
旅館の布団の上で一仕事終えて、眠りにつくと、数時間後に彼女が胃の痛みを訴えて苦しそうにしてるのに、僕は手を繋いであげる事が精一杯で眠気に負けて寝てしまった。
でも、再び目を覚ますと治ってて、2回戦目。
…をしていると「ご朝食はどうなさいますか~?」と仲居さんがノックしてきたので、慌てて中断したっけ。
いやしかし、それを「後で」とかいって、一応フィニッシュまで持っていったんだったかな(笑)
ふられたわけでもなく、ふったわけでもないが、ともかく、その年の暮れにその彼女とは別れる事になった。
僕は震災の年に、地震の数日前から新しい彼女と付き合い始めていた。
たまたま、正月明けに知人に紹介されただけだったんだけど、別にタイプってわけでもなかった。
ただ、僕の隣の席が空いていたからに過ぎない。
実は僕は、その別れた大好きだった彼女と、被災地域となったある場所で同棲しようと思っていた。
結婚を前提に。
地震後、半年程経ってからその場所をたまたま訪れたんだけど、そこは完全に更地となっていた。
どうして更地にされていたのかは知らないけども、もしかしたら、全壊とか火災とかあったのかもしれない。
ひょっとしたら、別れず、同棲していたら、死んでいたのかも知れない。