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2020-03-02

中国国策ゲノム解析業と冨士フィルムアビガン

インフルエンザ薬として備蓄されているアビガンコロナ19に転用する事を検討していると厚労大臣が言っている。

冨士フィルム製造するこの薬が効くと2週間以上前発見したのは中国である

この背景を説明したい。

 

実は今の中国ゲノム解析最先端である

ゲノムとは遺伝子であるDNARNA(ウィルスなど)の塩基配列の全ての事を言う。

ゲノム解析の事の起こりは人間のヒトゲノムで、1991年から開始され当時はビッグプロジェクトであった。

これは13年掛かって2003年に全部の解析が完了した。

これに刺激され、シーケンサー(塩基配列読取機)の開発競争が激化。日本企業も参入した。

だが先頭を走る米企業群の開発速度はあまりに凄まじく日本企業は軒並み脱落してしまった。

開発競争の末、今ではヒトゲノム解析は2日程度で終わるようになっている。13年は4747日程度だから約2400倍の進化でありムーアの法則どころの話ではない。業界トップ企業米国イルミナである

当然機械けが開発されているのではなく、シーケンサーを使ったゲノム解析事業が隆盛している。

そこで最大規模を誇るのが中国BGI社で、イルミナ社のシーケンサー大量購入規模の経済も生かして大規模低価格サービス提供している。スケールアウトである日本にも支社がある。

次にBGIが目指したのはお客さんから内製化とスケールアップで、M&Aで米国ナンバー2企業を買収した。

これでイルミナ社を追い抜き世界最速のシーケンサー製造を目指している。シーケンサー製造と利用の両面で覇権を握ろうと言うことである。だがイルミナ社の技術力は更に上を行っているので更なる競争激化となっている。

 

勘違いしてはいけないのは中国権威体制から軍事利用などと考えがちだが、これはオープンサービスで誰でも顧客となれるしコモディティ化覇権競争しようという後期資本主義的な活動という事だ。

まり国の体制による危険性を危惧するならば、覇権を握った後に標準化の主導権を獲得し、反倫理的ルールが入り込むのではないかと考えた方が妥当だ。

EUPC市場でのインテル地位を獲得する可能である

実際、多くのアメリカ医療研究所財団BGI提携している。

 

ヒトゲノム個人間では当然に違いがあり、差分を取る事は医薬の分野で重要だ。

Wikipediaのヒトゲノムの項には2008年より1000人ゲノムプロジェクトが始まるとの記述があるが

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%92%E3%83%88%E3%82%B2%E3%83%8E%E3%83%A0

これは最早呑気な記述で、オバマ時代アメリカでは100万人プロジェクトが開始され、その後には中国が1000万人規模の解析プロジェクトを開始している。

ゲノム解析国策でもあるという事だ。

 

そんな中国なので武漢コロナ19が発生し、初期の隠蔽を止めるとたちどころにコロナ19のRAN配列は解析終了してしまった。

コロナワクチンはまだ存在しないが中国が急遽研究者を集めて開発開始したのはこういう背景があり、ワクチン開発に成功する可能性もある。

 

同時に進められたのは既存薬の適合の確認である

塩基配列を見ながら合成される酵素などを推定し、既存薬で適合する阻害機序確認した。

一般細胞でのセントラルドグマの働きはこうである

 

捻ってあるDNA伸ばす→結合しているDNAを2つに開く→メッセンジャーRNA持ってくる→転写酵素RNADNAの該当箇所を転写する→メッセンジャーRNAタンパク質工場であるリボゾームに行く→RNA情報通りにタンパク質を合成

 

RNAウイルス細胞内に進入するとメッセンジャーRNA以下の工程をハックして自分RNA情報タンパク質酵素を合成させる。細胞ウィルスの複製を作ってしまう。

ウィルスRNAの複製にはやはり転写酵素が使われる。

だがここでDNAの転写と違う酵素(RNA依存RNAポリメラーゼ)が使われるのが特徴である。(作ったのはハックされたリボゾーム)

アビガン等の抗ウィルス薬はこの酵素を狙い撃ちして阻害する働きがある。DNA転写酵素と同じだったら細胞の働きも死んでしまうのだがRNAウィルスの使うRNA依存RNAポリメラーゼは違うのが幸運である。これでRNAウィルスRNA転写だけが出来なくなって増える事が出来なくなってしまう。

 

中国研究所では塩基配列から合成される酵素を見つけ出した。

それに適合する阻害薬を探したところ見つけたのがアビガン他の薬だ。それぞれ抗インフルエンザ薬、抗HIV薬と薬効は違う筈なのに作用機序が適合する事を見つけたのだ。

タイで抗HIV薬を投与して症状緩和との報道があった時にネタ扱いされていたが、ちゃん作用機序ウィルス設計図から割り出していて、その情報を元に投与したのだから当てずっぽうな人体実験ではないのである

 

また中国で発表された時に「冨士フィルムアビガン」と名前まで名指しされて出ている。

これはどうしてかと言うと、実はアビガン中国ライセンス生産されている。

念の為に書くと、ライセンス生産とは現地の会社製造許可製法を与え、代わりにライセンス料を貰うという海外事業方法だ。当然技術移転が前提になる。技術指導が行われる事も多い。

こういう訳で名指しで薬効の適合が発表されたのだ。

 

ここから厚労大臣の「検討」発表までは2週間以上かかっており、遅いとの印象が拭えないがそれはおく。

こう見ると中国にかなり遅れている日本の姿も見えてしまうが、それと同時にこういう技術的な背景も報道に載る事が無いというのも気になるところだ。

国内メーカーシーケンサー開発から撤退してしまった為に関心までなくなってしまったようである

 

まぁこのような訳で、中国国策となっているゲノム解析技術日本製薬会社海外進出が交差したところで「コロナ19にインフル薬のアビガンが効く」との発表になったとのお話でした。

 
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