2020-08-10

人達祈りの果ての「平和世界」は、我々の感情喪失させる

日本平和

日常堅牢さはこの100年で確立するようになった

巨大な暴力である戦争によって理不尽死ぬことはなくなり、飢えや疫病や大虐殺による死も少なくなった

規律と富と技術により、かくして生命を長らえさせることが容易になったこの世の中で、かくして人間リアルは失われるようになった

この先、人間生老病死すら克服し、神の庭でプカプカと浮くような生態を獲得するかもしれない

「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れない」

もはや、そこでは死ですら救済にならない、何故だろうか


誰しもが生命危機という危急の事態から遠ざけられ、子孫を残すことすら、社会的責任を果たすことすら自由になるようになった

人類史上、ここまで多くの人間がそうした「平和」を享受し、それと同時に「平和」という呪いを受けるようになったことはなかっただろう

我々は死ぬまで本当の感情を、本当の必然性必死さ、危急さ、緊急性をもって人生を歩まなくなった

食べ物ですら、「情報を食べている」と揶揄されるようになった

本当に食べたいものですら、我々はもはや自分で決められなくなってきている

自分が何をしたいのか、自分が何を求めているのか

我々に自分自身の意思はなくなってきている、カオナシかのように

もはやこの世界では、死ですら、セックスですら、コロナウイルスですら、戦争ですら救いにならない

システム化された社会はその修復力で、破滅回避したいという先人の願いが故に、日常を堅持するようになった

それは本当に切実な願いだったからこそ、そこを否定することが誰にもできない

だって、目の前で自分の愛する者が死んでいく現実肯定できる人間など、誰も居なかったのだから

今の世界は、数千年かけてやっと実現した願いの果てなのだ

無かった事にしてはいけない

でも、平和な世の中は真実、我々の魂を救っただろうか

救わなかった

「あの男には死ぬまで純粋な怒りなんて持てない」なんてセリフアカギで述べられたが

そうなのだ、この世界人間の中には、死ぬまで本気になれない人だっている

少年よ、我に返れ」と唱え、自分自身に戻り

「生きよ、堕ちよ」と、極限状態になった時にそれでも生き汚く、生き延び

自分が何者であるかを胸に刻み、望んでこの世界に生まれた二度目の赤子として自分自身の人生を歩み出す」ことを目指すしかない

政治による救い、社会システムによる救いなど得られない

それぞれの個別作業として、自分自身のオリジナルでパーソナルな苦悩と悲哀を母胎にし、何度も自分人生を再規定するしかないのだ

人間可能性を、この平和というシステムなんかでは人間本質尊厳は損なわれないことを信じるしかないのだ

花を咲かさな方法って言うのがあるの

…水も栄養も十分に与えるのよ

そうすると植物安心して花を咲かさないわ

咲かせるにはその逆

――タカちゃん

私もタカちゃんと同じ

別に描くことにこだわる理由なんてないの

ただ思い切り何かをやってみたかっただけなの

…私の場合 病気きっかけを与えてくれた

何もない所から頑張ろうとする方がムズかしいのよ

タカちゃんの方が大変だと思うわ

…でも何か見つけて…

――戸田誠二「花(生きるススメ収録)」より

「望むのは平和。ほんの少しの譲歩。

そしてわずかな共感と、刹那のふれ合い。

それだけしか望みません。

それだけで、わたし達は立派にやっていける。

その後のことは“みんな”が上手く形にしてくれる。

私はそれを信じています

だって信じて貰えなければ、私は人間でさえなかったんですから

あの日、あの夜。あの馬小屋の中で

虫けらのままで死んでいたんですから

――橙乃ままれ魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」より」

  • https://www.pixiv.net/artworks/97652638 基本的には色んな作品のネタバレと、ただの連想の垂れ流し ともかく、今回の話は凄かった 杉浦氏が「34話、うまく描けた気がする」「自分は34話みたいな...

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