2020-06-19

接触確認アプリがもたらすプライバシーリスク

リリースもされたので、考えていたことを少し書いておこうと思う。

接触確認アプリは、仕組みの説明やQ&Aにおいて、個人情報位置情報収集することはないと度々説明されている。だからといって利用者個人情報位置情報が、不本意第三者漏れるといったことが起きないかというと、そういうわけでもないだろう。接触確認アプリ単体では個人情報位置情報収集が行われなくとも、別の第三者企業から個人情報位置情報収集可能になる機会は増加する。

アプリ利用者場合

アプリを利用するユーザー場合を想定してみよう。

接触確認アプリが普及すればするほど、Bluetooth普段からオンにしたままにするユーザー割合が増えることになるだろう。普段Bluetoothオフにして必要な時だけオンにしていたユーザーは行動を変化させることになるし、今までBluetooth対応機器やビーコンを用いたサービスを使ったことがなくBluetoothって何?といった認識であったユーザーも、Bluetoothを常時オンにすることになる。

Bluetoothを常時オンにしておくことで、個人情報漏れるようなケースはいくつか存在する。

例えば、iPhoneBluetoothで検出される時に、良く「誰々のiPhone」とか、そういう名前で検出されてしまうけれど、これは典型的個人情報ではないのか。一般的ユーザー普通にセットアップしたらその状態になるのだから情弱だとか馬鹿にするのはまったくもって正しい態度ではない。(常時垂れ流しているわけではなくて、これはAirDrop問題の方が大きいけれど)

また接触確認アプリ単体では、ランダムで頻繁に変更される識別子を用いていても、他にインストールして利用しているアプリでは、ビーコンとの接触ログを記録したり、位置情報の記録や来店計測などに用いられるということは考えられる。Bluetoothを常時オンにしておくことで、こういった企業位置情報が把握される頻度は高くなる。

コロナウイルス感染した場合

感染した場合のケースも考えてみよう。

陽性反応が出たユーザーに対する説明なので、より詳細なリスク説明はもっぱらオフラインで行われることになるのだろうけれど、具体的にどのような説明が行われるのかは、Webサイト利用規約プライバシーポリシーを見てもFAQを見ても、いまいち良く分からない部分だ。

もしあなたが「コロナウイルス感染した」ということを隠したまま、接触ログだけを相手に通知したいと願っていても、通知を受けた相手から見て、誰が感染者であったのかということの予想が付くようなケースは発生するだろう。

例えば、濃厚接触の通知を受けたユーザー側が、期間内にごく少数の人間しか接触していなければ、誰が陽性だったのかを、少数に絞り込んだり特定することが出来るだろう。あるいは通知を受けたユーザー複数人間接触していても、引きこもりなどで「健康情報を把握できる関係人間(同居人家族など)」と、プラスアルファで少人数としか接触していないような場合には、やはり誰が陽性だったのかを絞り込めるだろう。

もし、接触ログ提供するにあたって「個人情報提供されないので安心してください」とか「通知を受ける人からは誰と接触したのかは分かりません」とか、そういう説明がなされてしまったら、それは嘘になってしまう。「感染者数や、被接触者数が少ない場合には、あなた感染であるということが通知を受けた相手から特定可能場合があります」というのが正確な説明になる。

これが中央集権型で接触データサーバー上で管理されているのであれば、接触ログが少ない端末には(感染特定リスク高まるので)接触した相手には悪いけれど通知しない、といったアプローチもありうるだろう。Google/Apple接触確認APIは、分散型のアプローチ選択したので、感染者が誰であったのかの特定リスクがどの程度あるかについて、感染者側から事前に正確に予測することは困難であるのだし「こいつには感染したことを知られたくない/通知したくない」という相手がいたとしても、選ぶことは出来ない。

位置情報についても、特定日付の感染者数が十分に少なければ、感染者が特定場所滞在していたことが特定されやすくなるだろう。

接触確認アプリ利用者側も、通知を受けたことを過度に騒ぎ立ててしまうと、その行動によって誰かのプライバシー(誰と会った、どこに滞在していた、だったり)を侵害してしま可能性があるということを気に留めておくべきだろう。

まとめ

接触確認アプリプライバシーリスクについて書いてみたわけだけれども、自分接触確認アプリの普及の妨げになるようなことをしたいわけではない。総合して見ると接触確認アプリへの取り組みは素晴らしいものだと考えているし、多くの人が利用すべきだとも思っている。

もし自分感染者になった場合に、どの店を利用したのかとか、誰と接触したのかとか、根掘り葉掘り聞かれるよりは、接触確認アプリによるログ提供の方が遥かにマシだろう。「いつどこに行きました」ぐらいなら本人のプライバシーということになるだろうが「誰と会いました」という情報であれば相手もいる。本人だけの問題ではない。個々人のプライバシーは誰か他人プライバシー内包していることもある。プライバシーというのは個人選択であると同時に、社会全体の選択だ。

正しくリスク説明されないまま、嘘の説明同意を得ることが起きてはならないと思う。個人情報収集されません、特定されません、位置情報は記録されません、安心安全です、だから同意して下さい、というのは違う。

公衆衛生のためにプライバシー犠牲になる側面があることは、接触確認アプリにおいても変わりはなく、その侵害の度合を最小限に留めるように努力しているというだけだ。

  • 神経質なアスペっぽい

  • アプリの問題ではない(完)

  • ブルートゥースイヤホン危険だね 通知するのは接触ログではありません (完)

  • そもそも、本当に感染したとしたら「俺と濃厚接触したこいつだけには知られたくない」とか許されないでしょ どういう動機でそんなこと考えるわけ?

  • anond:20200619203708 「アプリ」で検索して、それっぽい奴。6月だけ。 日 URL タイトル 主観による寸評・分類 06-22 anond:20200622171944 ■はてなブックマークはクソ 嘆き。はてな...

    • 近未来小説みたいなのも、混じってるね。。 つうか、数年後には3G廃止になるらしく、ガラケーから4G対応のスマホに換えて、なんか、すごい色々とビックリしたよ。サクサク、動く...

  • プライバシーの問題じゃないけど、Bluetooth常時onにしてたら電池の減りがヤバそうだから怖い

  • 煽り抜きで何がいいたいのか不明。 Bluetoothはゲームのすれちがい通信でずっと利用されてきた技術だし、そもそもスマホ持ってる時点でロギングされてる。 例えば、と書かれてるのはア...

  • どうやって個人を保護しつつ、感染の広がりを抑えるかは、ずっと議論されるべき問題。 第1波は"自粛要請"で上手くいったが、コロナ対策不要論者もそれなりに観測されるようになって...

  • 安倍の言うことは嘘八百 とにかくこれだけ覚えておけば良い

  • コンピュータの技術よりも法律とその運用の問題がある 日本では情報漏洩させても上級国民だったら責任を取らなくていい だからやり放題 都合が悪いことがあったら障碍者が勝手に書...

  • OSの問題はアプリの問題ではない bluetoothやwifiを有効にすればトラッキングされるリスクは増えるけど 現状だれも気にしてないし、アプリの問題でもない 感染者を特定できる可能性は...

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