はてなキーワード: ボール焼きとは
午後2時だった。
ポケモンGOでラティアスをゲットするために午前10時から徘徊を開始した俺はクタクタだった。
午後13時30分に公園のベンチに腰を下ろして素煎りのナッツを齧ろうしたら、公園が親子連れでいっぱいだったので立ち尽くしてポケモンGOをした後、スマホの電池も残り20%となったため帰宅することにした。
車1台がやっと通れる細い道にたこ焼き屋はある。
昼飯のナッツを食いそびれた俺は家でナッツを齧るのも味気ないと思い、たこ焼きを食べることにした。
それが午後2時だった。
窓口にいくと呼び鈴が置いてあるのでそれを押す。
リーン…となったベルは静寂にかき消された。人はきそうにない。
仕方がないので「すみませーん」と声をかけるも人は来ず、諦めかかけたその時に窓口の机に「右奥の出入り口よりお入りください」と表記があった。
窓口で頼むと店舗に入るのはハードルが違いすぎる。しかしお腹の中は完全に粉ものを求めていた。
入り口は本当にただの民家に「出入り口」と書いてあるだけだった。意を決して入ると「ピロピロピロ…」と電子音が奥から響く。
すると50代~60代のおじさんが一人「いらっしゃい」と出てくる。
「たこ焼きできますか」と聞くと「なんにしましょう」と聞いてくる。
看板には
素焼きもできます!
・ボール焼き(肉入り) 8個入り500円 6個入380円
とあったのを思い出し「たこ焼きの8個入りで」と頼む。
今から焼き始めるような雰囲気がしたので「座らせてもらいますよ」と声をかけて座る。
そういや昔母親によく連れてきてもらったたこ焼き屋もこんな民家を改装したようなところだった。たこ焼き屋というか粉もの屋で焼きそばとかお好み焼きもしていたが。
そこは12個はいったたこ焼きが400円だったかで、習字塾の近くだったため習字が終わったらお昼ごはんはいつもそこだった。1粒のたこ焼きを口の中いっぱいに頬張りやけどをする。それが土曜日の当たり前だった。
高校生になった自分も部活がない日はそこでたこ焼きを買って家に帰っていた。
よく考えたら12個で400円は破格だ。そこのおばちゃんは俺がいつも紅生姜多めマヨネーズ抜きを頼むので紅生姜を生地に混ぜ込む量もあり、思い出が蘇る。
5年前ぐらいに倒れてからお店は畳んでしまったのが悔やまれる。
そんな事を思いながらたこ焼きができるのを待つ。
「おまたせしました」
おじさんがワンパックのたこ焼きをレジ袋にいれて渡してくれる。
500円を渡し50円を受け取る。
そう思って家についた。
銀だこやその他たこ焼きチェーンでもそうだが、最近の流行りは大粒のたこ焼きなのだろう。
小さかった自分ならまず一口では食えない。やけどしないように冷ましてから頬張る。
紅生姜は中々多め、マヨネーズもかかっているが今の自分は食べられるようになったから問題なし。
ただ思ったが、大粒なのはお店の都合なのかとおもった。
昔たべたたこ焼きは確かに一粒が小さかったがその分たこを楽しめた。小さい分主役のタコが主張をしてきた。
体だけ大きくなって、自分だと主張できる部分は子供の頃から大きくなっていない。
ある人が考えれば大粒のたこ焼きは原価の安い粉もの部分で満足させられる企業努力だというだろう。
俺もそうなのだ。体が大きくなったのはただただ人間として労働力を高めた結果にままならない。
だが悪い言い方をすれば、中身が伴ってないたこ焼きと人間は食べログレビューで3.0なのだ。
そのたこ焼き屋はレビュー数3件で平均3.08だった。これが自分なのだ。
俺はおばちゃんのたこ焼きがもう食べられないことを悔しく思っていたが、実のところは俺がおばちゃんのたこ焼きを食べる資格を失っただけなのだ。
俺はそんな事を思いながら「でもいいじゃねーか、大きいだけでも」と思いながらその店の食べログレビューに4をつけたのだった。