はてなキーワード: ジャックラッセルテリアとは
白い小型犬だった。犬種はジャックラッセルテリアで、短毛タイプだった。姉の中学進学祝いにうちにきて、家に来たのは私が小学生の頃だった。
犬は暗に家庭内の序列を見抜くと言うが、彼女は明らかに私が家庭内でもっとも低い序列であることを、幼いながら見抜いていた。餌を上げる係だった姉にはいい顔して、家の主の母には甘えて、絶対者の父の言うことは必ず従ったが、私には懐かずいつも歯向かって来たものだった。私もそれが気に食わなくてよく喧嘩のように戦ったものだった。私が大学進学で家を出るまでそんな関係がずっと続いていた。
それから十年近く。帰省をするたびに彼女は衰えて行った。散歩に行ってもすぐ帰りたがり、あまり走らなくなり、目が悪くなって大好きだったおもちゃを投げても反応が悪くなった。最後に見たときは本当にヨボヨボで、走り回って飛び回っていたソファにすら自力で登れないほどになっていた。そんな姿を見るにつけ母とは「本当に歳取ったよねえ」と頷きあった。そんな彼女が先日死んだ。18歳だった。ご飯を食べなくなって3日、健康時の半分くらいの体重だったらしい。
訃報を聞いてすぐにはなんともなかったが、母と彼女についてラインを交わすうちに涙が止まらなくなった。これを書いてる今も二文くらい書くごとに嗚咽が止まらない。
たぶん犬にしてはとても長生きで致死的な病気を患ったわけでもなく(肝臓を悪くして母にウルソを盛られていたが)て老衰だと思う。彼女のことを思うにつけ「うちに来て幸せだったのかな」という念に囚われては、涙が溢れ返す。
ジャックラッセルテリアは本当なら牧草地を駆け回る犬種なのに、散歩ではアスファルトの地面ばっかり歩かせて、室内ではせいぜい廊下を少し走らせてやる程度しかさせられなかったね。平日昼間は家に誰もいないからほっぽりだしてずっと一人でソファで寝てばっかり。しばらく虚勢させないままで、本当は子どもとか欲しかったかもしれないけど、ずっとソワソワして落ち着かなかったり家中に血が飛ぶからって最後は虚勢させちゃったよね。
でも、たぶん寝るのは嫌いじゃなくて、学校が休みのときとか昼過ぎの高い日差しの指す窓辺に「ここにクッションを置け」と言わんばかりに佇んで、一緒にお昼寝したよね。あとなぜか足の裏を舐めるのが好きで、寛いでると足元に現れて、足を爪で引っ掻いて「足を出せ」アピールをよくしたよね。お風呂に入ったあとのしょっぱくない足だとすぐに舐めるのをやめるワガママなところは相変わらずだったけど。いつもいがみ合ってたけどそういうときだけ打ち解けられた気がしてたよ。あと実家を離れてから久しぶりにあったときも実家にいたころより徐々に柔和になってきてるようで、少しずつだけど大人として認められてきたような気がして嬉しかったよ。
彼女は犬として幸せだったのかな。幸せだったらいいな。もしそうじゃなかったらごめんね。それでもうちに来てくれてありがとうね。魂がどこ行くかなんて分からないけど、この先もずっと安らかでいられることを願ってるよ。じゃあね。
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