1. K理論とは何か?
3. 具体的な数式と例
4. 結論
K理論は代数的位相幾何学や代数幾何学における強力な道具であり、空間上のベクトル束の同型類を分類するための理論である。特に、位相的K理論はコンパクト位相空間上の複素ベクトル束の差を考慮し、その情報をKグループと呼ばれるアーベル群にまとめる。
位相空間 X 上の複素ベクトル束全体を考え、その同型類を Vect(X) とする。K理論では、これらのベクトル束の形式的な差を取ることで、グループ構造を持つ集合を構成する。具体的には、Kグループ K(X) は次のように定義される:
K(X) = Vect(X) × Vect(X) / ∼
ここで、同値関係 ∼ は、ベクトル束の直和と差を考慮したものである。
超弦理論では、Dブレーンは開弦の終端が存在できる超膜であり、ラモン-ラモン(RR)場のソースとして機能する。従来、RRチャージはコホモロジー理論を用いて分類されてきたが、背景空間にトーラスのような非自明な位相構造がある場合、コホモロジーでは全てのチャージを正確に捉えられないことが判明した。
これに対して、K理論を用いると、Dブレーンのチャージをより精密に分類できる。具体的には、Dブレーンのチャージは空間 X 上のKグループの元として表現される:
Dブレーンのチャージ ∈ K(X)
これにより、背景場や位相的効果を考慮したチャージの非自明な構造を捉えることが可能となる。
コンパクト位相空間 X に対する複素Kグループ K(X) は、ベクトル束の同型類の差を形式的に考えることで定義される。
まず、複素ベクトル束の同型類全体からなるモノイド Vect(X) を考える。このモノイドからグループを構成するために、Grothendieck群を取る:
K(X) = G(Vect(X)) = Vect(X) × Vect(X) / ∼
(E₁, F₁) ∼ (E₂, F₂) ⇔ E₁ ⊕ F₂ ≅ E₂ ⊕ F₁
K理論の要素からコホモロジーへのマッピングとして、チャーンキャラクターが存在する。これは、Kグループから有理コホモロジー群への準同型写像である:
ch: K(X) → Hᵉᵛᵉⁿ(X, ℚ)
チャーンキャラクターは、ベクトル束の位相的性質をコホモロジーのクラスに対応付けるものであり、Dブレーンの物理的な特性を解析する際に重要である。
Dブレーンの世界体は空間 Xに埋め込まれており、そのチャージはKグループの元として表現される。具体的には、Dブレーン上のベクトル束 E を考えると、そのチャージは [E] ∈ K(X) で与えられる。
さらに、背景場としてのB場(B-フィールド)の効果を考慮すると、ねじれたK理論 K*(X, H) が必要となる。ここで、H はB場の三形式のフラックスを表す。
K理論は、超弦理論におけるDブレーンのチャージを精密に分類するための数学的枠組みを提供する。特に、背景空間の位相的・幾何学的な特徴や、B場のような非自明な背景場の影響を正確に捉えることができる。これにより、超弦理論の物理的予測や、Dブレーンのダイナミクスの理解が深まり、理論物理学と数学の深い関係が示されている。