2024-10-03

K理論超弦理論

目次

1. K理論とは何か?

- 位相的K理論の基本概念

- ベクトル束の分類とKグループ

2. 超弦理論におけるK理論役割

- Dブレーンとラモン-ラモン(RRチャージ

- K理論によるDブレーンのチャージ分類

3. 具体的な数式と例

- Kグループ定義

- チャーンキャラクターとの関係

- 数式によるDブレーンのチャージ記述

4. 結論

1. K理論とは何か

位相的K理論の基本概念

K理論代数位相幾何学代数幾何学における強力な道具であり、空間上のベクトル束の同型類を分類するための理論である特に位相的K理論コンパクト位相空間上の複素ベクトル束の差を考慮し、その情報をKグループと呼ばれるアーベル群にまとめる。

ベクトル束の分類とKグループ

位相空間 X 上の複素ベクトル束全体を考え、その同型類を Vect(X) とする。K理論では、これらのベクトル束形式的な差を取ることで、グループ構造を持つ集合を構成する。具体的には、Kグループ K(X) は次のように定義される:

K(X) = Vect(X) × Vect(X) / ∼

ここで、同値関係 ∼ は、ベクトル束の直和と差を考慮したものである

2. 超弦理論におけるK理論役割

Dブレーンとラモン-ラモン(RRチャージ

超弦理論では、Dブレーンは開弦の終端が存在できる超膜であり、ラモン-ラモン(RR)場のソースとして機能する。従来、RRチャージコホモロジー理論を用いて分類されてきたが、背景空間トーラスのような非自明位相構造がある場合コホモロジーでは全てのチャージを正確に捉えられないことが判明した。

K理論によるDブレーンのチャージ分類

これに対して、K理論を用いると、Dブレーンのチャージをより精密に分類できる。具体的には、Dブレーンのチャージ空間 X 上のKグループの元として表現される:

Dブレーンのチャージ ∈ K(X)

これにより、背景場や位相効果考慮したチャージの非自明構造を捉えることが可能となる。

3. 具体例

Kグループ定義

コンパクト位相空間 X に対する複素Kグループ K(X) は、ベクトル束の同型類の差を形式的に考えることで定義される。

まず、複素ベクトル束の同型類全体からなるモノイド Vect(X) を考える。このモノイドからグループ構成するために、Grothendieck群を取る:

K(X) = G(Vect(X)) = Vect(X) × Vect(X) / ∼

ここで、同値関係 ∼ は次のように定義される:

(E₁, F₁) ∼ (E₂, F₂) ⇔ E₁ ⊕ F₂ ≅ E₂ ⊕ F₁

チャーンキャラクターとの関係

K理論の要素からコホモロジーへのマッピングとして、チャーンキャラクター存在する。これは、Kグループから有理コホモロジー群への準同型写像である

ch: K(X) → Hᵉᵛᵉⁿ(X, ℚ)

チャーンキャラクターは、ベクトル束位相性質コホモロジークラス対応付けるものであり、Dブレーンの物理的な特性を解析する際に重要である

数式によるDブレーンのチャージ記述

Dブレーンの世界体は空間 Xに埋め込まれており、そのチャージはKグループの元として表現される。具体的には、Dブレーン上のベクトル束 E を考えると、そのチャージは [E] ∈ K(X) で与えられる。

さらに、背景場としてのB場(B-フィールド)の効果考慮すると、ねじれたK理論 K*(X, H) が必要となる。ここで、H はB場の三形式フラックスを表す。

4. 結論

K理論は、超弦理論におけるDブレーンのチャージを精密に分類するための数学的枠組みを提供する。特に、背景空間位相的・幾何学的な特徴や、B場のような非自明な背景場の影響を正確に捉えることができる。これにより、超弦理論物理予測や、Dブレーンのダイナミクス理解が深まり理論物理学と数学の深い関係が示されている。

参考文献

  • E. Witten, "D-branes and K-theory", Journal of High Energy Physics, vol. 1998, no. 12, 1998.
  • M. R. Douglas, "D-branes, Categories and N=1 Supersymmetry", Journal of Mathematical Physics, vol. 42, no. 7, 2001.

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